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YOU COULD Be MINE.
Romancing Sa・Ga.

07. 反撃開始。

「悪い。ちょっと、やりすぎたようだ……」

 いつまでもぐったりとしている少女を見て、ホークは困惑し始めていた。

「…………そんなこと……ないよ……」

 アイシャはまだ息が乱れていたが、そう言うと恥ずかしそうに顔を枕にうずめた。

そして「また……なの」と、呟くのが聞こえた。

「ん?」

 “また”とは?とホークは尋ねた。するとアイシャはぼうっとした顔を男にむけて、彼に尋ねた。

「どうして、ホークさんは、服を全部脱がないの?」

 そのことか。ホークは彼女をふたたび軽く抱き締め、

「……脱いじまったら、最後までしたくなるだろうが」

 と、告げた。

「どうして、……しないの?」

 アイシャは不思議そうだった。さっきの話しではないが、ここまでしたのなら最後まですればいいのに、むしろなぜしないのかという疑問があった。少女にだって少しは交合の知識ぐらいはある。むしろ男性はそのために女を抱くのではないのだろうか?そして、自分ばかり気持ちよくて、なんだか悪いな、とも。

 しかしこれは実に余裕のある考えだと自分でもその時初めて気がつき、少し恥かしくなってしまった。

 ホークは、無言で少女を見詰める。まるで、心の中を見透かされるような目つきだった。アイシャは「ごめんなさい…」とだけ告げると、彼の胸元に顔を埋めた。だが、それだけではない。

 男の胸元に奔る、くすぐったいような感触。彼の胸元に、少女は唇を這わせていたのだ。

「おい……」

 ホークは予想外の行動に、思わず声をあげた。すると

「あたしばっかり、……なんとなく、悪いし……」

 と、少女は恥かしそうに告げたのだ。ホークは「生意気言いやがって」と苦笑したが、(なんて奴だ)と、感心に近い感覚を覚えていた。そのまま、少女の好きにさせてやった。だか、とにかくもどかしい。―その点では、何倍も『技量』のある女はいくらも知っていた。

 しかし、この少女の健気で、初々しく、もどかしい仕草はそれらの女たちの持つ技など消し飛んでしまうほど愛おしく思えた。ホークは湧き上がる熱に耐えることができなくなり、そんな少女の手を取って、勢いよく彼女の上に覆いかぶさると、指を絡めてベッドへ組み敷いた。そして、「見上げた、……女だな」と言って微笑うと、唇を重ねた。

「あたし……」

 アイシャは恥かしそうに目を閉じる。

「そんな事は、これからゆっくり覚えたらいい」

 言いながら、アイシャの頬や、首筋に軽く、ちゅっ、ちゅっ、とくちづけを這わす。

「んっ……んんっ……、はぅんっ……」

 ホークが自らの柔肌を吸い上げるその度に、少女は可愛らしい声を漏らして反応していた。

「……本当にいい子だな、お前は」

 ホークは言いながら絡めていた指を外すと、左手でアイシャの頬に手をそっと添え、しばらくの間愛しげに撫で続けていた。アイシャはその感触がとても心地よくて、目を閉じ彼の手にそっと自分の手を重ね、ぬくもりを味わっていた。

 ふと、一瞬彼の躰が離れたが、すぐに少女の身体にそっと覆いかぶさるような体勢となったのを感じ、目をうっすらと開ける。

 自らの足に絡まる、彼の足の感覚。それは布の感覚ではなく素肌のそれだった。いつの間にか彼は一糸まとわぬ姿となっていたのだ。それに気付いた瞬間、心臓が一度、ドキンッと高鳴った。

 まさか、もしかして。

 アイシャはやはり、いざとなってみると不安を隠しきれなかった。ホークはそんな彼女の気持ちを知ってか知らずか、徐ろに彼女の両脚の間に躰を差し入れると、

「お前が好きだ、アイシャ……」

 確かにそう囁いた。少女が今まで聞いた中でも一番切なくて甘い声。

「あ……たし……」

 何かを言おうとしたが、言葉に詰まった。そうすると、先ほど彼の二本の指で十分にかき回されていたところに、今までとは違う感触を感じた。

 『何か』が当たっている。正確に言えば、充てがわれている。指など比べ物にならない、大きな何かが。何度か滴る少女の蜜によってぬるぬると滑り、その場所を攻めあぐねていたようなそれは、漸く少女の中心を貫いた。

「ひあぁ!あ…うくっう……っ!」

 それが入ってきた瞬間あまりの痛みに、悲痛な声を上げる。それでも彼の首を精一杯抱き締めて懸命に痛みに耐えていた。彼は何も言わず、ゆっくりとアイシャの中で動き始める。

「いっ、い……。うっ……うっ……んっ……ううっ……」

 アイシャがだんだんと、泣声になっていくのがわかった。きっと相当痛いのだろう。表情も苦痛に耐えるそれになっていた。あれほどよく蜜を滴らせていて、口や指でも何度か絶頂に達していたのにも関わらず、なかなかホークがその奥へ沈むことを許してくれない。

「……力を抜かなきゃ……っ……いつまで経っても痛いだけだぞ……」

 と、ホークは低い声で呻くように呟いた。少し苦しそうでもある。彼もまた、予想以上のきつさに苦戦をしているようだった。

「そ、そんなこと、言ったって……うううう」

「あんまり耐えられねえんだったら、やめてもいいぜ…………」

 その言葉を聞いて、アイシャは苦しそうな顔をしながらも、ふるふると首を横に振った。

「やって、みる……」

 彼に言われるまま、息を吐いて、出来る限り力を抜いてみることにした。するとその瞬間ヌルリ、と一気に彼が奥の方まで侵入してきたではないか。すると、まるで喉にささった小骨でも取れ、ようやく息ができたかのように、アイシャは切ない悲鳴をあげた。

「ひぃっ……や……はっ……あ、ああああ……!」

 間違いなく、その悲鳴は痛みのものだけではないのがわかる。

 ホークも、突然自分のものが深く収まった事に安堵と、あまりの気持ちの良さに、深い溜息を吐いた。しばらくは様子見のようにゆっくりと優しく動いて愉しんでいた。その動きに合わせて、小さな身体のアイシャはゆさゆさと動いている。まだ苦しそうなのと、痛みのためにまだまだ顔をしかめたりしているが、少しだけ突き上げるように動くと、彼女は切ない声を上げた。そこは、彼女の弱点なのをよく心得ていた。

 そろそろホークの方もたまらなくなると、徐々に、腰を突き動かすスピードを速めた。愛する少女を抱きしめて、お互いを強く感じながら―

 すると突然、自分を捕まえる、少女の手にひときわ力がこもる。

「あっ、あっ、あっあっあっ、あぁぁーーーー!」

 アイシャは絶叫し反り返ると、同時にホークのそのものを、痛みを伴うほど強く締め付けたのだ。

「くぅっ……!」

 とても耐え切れず、男は少女の裡にありったけを放出した。しかしなお、痙攣する少女の肉襞はなかなか男を解放してくれない。

「はぁ……はぁ……痛いよう……はぁ……でも…………、きもち……いい…………」

 自らの痙攣によって痛みを感じ、少女は息切れしながらも呻く。もはや精根尽きたといった具合に脱力し、ぐったりとただ其処に横たわっていた。そんな少女を見て、ホークは尚、いとおしくてたまらなくなった。ようやく少女の中の律動が収まった頃、ゆっくりと自身をそこから引き抜いた。

「あ………っ」

 彼女は、今まで自分の中で暴れ狂っていたそれがたちまち引き抜かれる独特の感触に驚き、寂しさすら感じる。そして今まで栓をされていた蜜壺から、それを引き抜くとドロリとした何かが流れる感覚がした。

 ホークはそれをチラリと見ると、それを素早く部屋にあった紙で拭ってから低く呻いてベッドへと躰を横たえた。そして少女の身体を背後からいとおしそうにゆっくりと包むと、そのまま目を閉じてしまった。

 はあ、はあと、息を乱していたアイシャだったが、抱き締められているその手を取ると、ゆっくりと、しかし力強くぎゅっと握った。そして振り向かず、やっと整いかけた息と共に発した。

「私、もう、ホークさんしか居ないの。……どこにも、行かないでね……」

 と。

「……だから黙って、俺に抱かれたか?」

 男はまた意地悪なこんな言葉を返してきた。アイシャは哀しげな顔をしたが黙っていた。そしてしばらくしてから、ささやくように零した。

「……わからないよ……でもホークさんが言うみたいな、意味じゃないと思うの。だって、本当に逢いたくなったのは本当だもん……」

 それ以上何も言わずに、ホークの腕に顔を埋めてしまった。そんな計算で関係を持ったのではと思われたのがショックのようだ。ホークは悪いと思い、その小さな身体をきつく抱き締めていた。

「……すまん。今まで計算高い女が身近に多くて、つい口が滑っちまった。……でもな、だからといってお前を嫌うとか見捨てるって訳じゃねえ。安心しな。……惚れたのは、俺の方だ。冥府にだって付き合おうじゃねえか」

 そう言うと、もう一度アイシャの首筋にくちづけをしたのだった。

「………うん…っ………」

 大袈裟な音を立て、その粘膜は首筋と、そして心までもを舐め上げられるようだった。ぞくりと背筋に這う快感……。声が,勝手に洩れ出てしまう。さっきあれだけ淫らに喘いでその声は擦れてしまっていたが、それが一層男の欲情をそそった。それこそ今しがた満たされた筈の男の部分がまた活気付きそうだった。

 アイシャは黙っていたが、やはり困惑していた。

 でも、一つだけ言える。

 とても心が痛くて、苦しい。でもホークが嫌だからでないのだけは確かだったのだ。

 

 雨の音が窓を叩く。

 その旋律が、沈黙を少しだけ気まずかった空気を打ち消していてくれた。

 しばらく無言で抱き合い、時にどちらかともなく唇を貪り合う。そんな時間がしばらく続いた。

 

 しかしやがて二人は身体を離すと、ゆっくりと服を纏い始めた。

 部屋に戻らなければマズいからだ。しかし、服を着ようとするアイシャの乳房や太ももに手を這わせ、彼はなかなかすぐに服を着せてくれない。

「だめだ……よぉ。もう、戻らないと」

「わかってる」

 そして、やっと二人とも服を着ると、もう一度抱き合い、唇を重ねた。

 一体今夜だけで、どれほどお互いの唇を味わったのだろう。それでもまだまだ足りないことに、何より自分自身がそう感じていることにアイシャは内心驚いていた。

 

 それからさらに三十分ほどして漸く海賊から解放されたアイシャは元の寝室に戻ったのだった。柱時計をちらりと確認すると、時刻はもう既に夜明けのほうが近かった。

 隣のベッドで、クローディアは静かな寝息を立てている。アイシャは胸を撫で下ろして、そっと気づかれぬようベッドに這入った。そして、横になったが、そのときクローディアを見てふと思ったのだ。

 (クローディアとグレイは恋仲なのかな……。するとこの人たちも、―あたし達のような事を?)

 そんな下世話な考えをした自分に気づき、顔を真っ赤にして、大慌てでアイシャは顔を横に振った。

 (あたしってば一体何を考えてるのよ……!)

 考えを振り切るかのようにアイシャは急いでベッドに潜り込み、頭までシーツを被った。するとすぐに睡魔は訪れてくれ、朝まで昏々と眠ることが出来たのだった。

 

 

 そして次の朝。自然と目が覚めたが体は思いの外だるかった。結局明け方近くまで秘め事を堪能していたのだから、疲れが取れなくても仕方ないことだった。しかし起きなければならない。朝から雲ひとつなく晴れた空が少しだけ恨めしいと思った。こんな気持ち、初めてだ。

 隣のベッドを見ると、クローディアの姿はなく、また少し、寝坊をしてしまったかなとアイシャは焦った。アイシャは昨日のように急いで水晶亭へと向かう。

 その途中で、クローディアが街路樹の近くで一人でぼんやりとしているのを見つけた。

「クローディ……ア?何をしているの?」

 アイシャが遠慮がちに尋ねると、クローディアは振り返るとふっと微笑んで、こう答えてくれた。

「朝の空気ってとても清々しいでしょう?こんな都会でも朝だけは私の育った森に似た空気が流れるの。こうして、数少ない樹のそばで今のうちにいっぱい浴びているのよ。そうすると、その日一日森の神シリルのご加護を受けていられる気がしているの」

「へぇ……。そういえば」

 昨日の雨のせいか、空気はいつもよりも澄んでいるようだった。

 アイシャは昨夜あんなことを考えたのを心から恥じていた。けれど、やはり気になる。アイシャは思い切って聞いてみたのだった。

「ねえ、クローディアとグレイは恋人同士……なの?」

 その問いかけにクローディアは少し考えていた。

「コイビト……って、何かしら」

「え……っ」

 とんでもないクローディアの返答にアイシャは耳を疑い、思わず素っ頓狂な声を上げてしまった。

「その……なんだろ……。お、お互い好き同士なの?」

 アイシャはどう言ってよいか判らず、言葉を選び、遠慮がちに尋ねたのだった。

 それにクローディアはまたも少し考えると、

「そうね、彼は任務で私を警護していてくれているけれど、とても良くしてくれるし、無駄口が少ない静かな人だから好きだわ。グレイの方はどう考えているかはわからないけれど、別段私のことを嫌いではないと思うわ」

「は、はあ……。ありがとう。ヘンな事聞いてごめんなさい」

 アイシャは困惑しつつ、その場を去り水晶亭に向かおうとした。

 すると突然背後から話しかけられた。ゾクリとするほど低い声で。

「……あのクローディアは、物心が付いた頃から森でばあさんと動物達だけで暮らしていて、人間世界に出てきたのはつい最近のことだから、世俗の風習にはまるで疎いんだ」

 それはグレイだった。アイシャは驚いて、「ひゃっ!」と声をあげてしまった。背後で喋ってくれるまで、まったく気配がわからなかったので、心臓が止まるほど驚いてしまった。

「――俺たちは別に恋仲というわけではない。少なくとも君達の様な……ね」

 グレイは意味有り気に笑うと、その場を去った。

 アイシャは驚いたが、その言葉も引っかかっていた。どういう意味なのだろうか。

 

Last updated 2015/5/1

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