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YOU COULD Be MINE.
Romancing Sa・Ga.

02. 春雷

「んむぅっ……ん……っ、んん……!」

 アイシャは突然の出来事にただただ驚き戸惑いながらも、とにかくその彼の腕から逃れようとしてもがいたり叫ぼうとした。しかし何故か力がほとんど入らないのだ。今の彼女ができることと言えば、手で彼を引き離そうとする仕草ぐらいだったが、男はかまわずそのままベッドに少女を押し倒し、その唇を貪り続けた。

 アイシャはあまりにも力が入らないことに絶望感を感じつつも、先ほどまでこの男が見せてくれていた優しさにも淡い期待を掛けてしまった。

 (もしかしたら……キスだけで、許してくれるかも……)

 そう思い、抵抗を少しやめてみる。その途端、男は一瞬表情を曇らせたが、少女を押さえつける腕の力は弱まってその呪縛による苦しさから開放された。

 その口を塞ぐ荒々しい唇は、それまでのまるで食べられてしまうのではないかとも思えるほどの乱暴なキスとはうって変わって、優しくゆっくりと丁寧さを感じる仕草へと変化していったのだ。アイシャはその変化にも戸惑いつつ、瞼をできるだけ固く閉じて、とにかく早く終わらないかと思いながら必死に我慢するしかない。心臓だけがバクバクと鼓動し、耳に直接鼓動が流れているように感じた。

 その間にも、ホークの唇はアイシャのそれを丹念に吸い上げ続けていた。唇を跳ねる唾液のぴちゃり、という湿った音がやけに隠微で、更には彼の少しだけ荒い息遣いと微かに漏れるお互いの小さな喘ぎがいやに聴覚を刺激し、背筋をぞくぞくとさせる何かを感じ始めていた。

 やがて彼のその生温い舌は容赦なくアイシャの口腔内へと侵入し、うごめく舌が自分の舌と絡むとその独特の感触に驚き、小さく悲鳴を上げて顔を背けようとしたが、彼はそれを許すはずもなく、両腕で顔をしっかりと固定されながら唇と舌を舐め取られてしまった。

 

 やがて彼はちゅっと音を立て少し強くその唇を吸うと、自らの唇をそっと離した。アイシャは固く閉じていた瞼をゆっくりと開くと、その瞳からは涙が一筋伝う。

「……………………」

 アイシャは、このあまりの出来事に放心してしまい、ぴくりとも動けないでいた。だが、これで彼の気が済んでくれ終わりかと思った。現に彼はゆっくりと起き上がると、ドアのほうへと歩いていったからだった。

 しかし、それは部屋から出て行くためではなかった。外の人間がこの部屋へと入ってこれないようにするために施錠をするためだったのだ。もちろん少女が逃げ出さないようにという狙いもあったのかもしれない。

 アイシャは鍵を閉められたのに気がつき、同時にそのことによってまだ『続き』があるということを瞬時に察した。血の気が引いていき、逃げなければと上体を起こそうとしたが、すぐにベッドへと戻った男に押し倒され、再び唇を塞がれたのだった。そして、その唇は、少女の口だけにとどまらず、首筋にも範囲を広げていき、更にその下へと進んでいきそうだった。

「イヤぁ……っ……やめてぇ…………イヤぁ……っ!!」

 少女は泣きながら男に懇願した。もっと大声で叫びたいのに、声すらまともに出すことが出来ない。せめて力が入らない手で必死で男の背中や肩を叩く。しかし、彼は痛くも痒くもないといった様子だったが、大声ではないもののあまりにもアイシャの声が甲高いのに、顔をしかめて耳を軽くほじると、また少しだけ強い力で彼女の両腕を押さえつけると、その唇を押し付けるように塞いだ。

「いやッ……んむぅっ……っ…………っ!!」

 息が苦しくなり必死に酸素を取り込もうと鼻息を荒くしながらアイシャが必死で藻掻いていると彼は唐突に顔を離してくれたので、アイシャがたまらずに「くはぁっ……!はあっ……はぁっ……っ」と息を正すのにあっぷあっぷしてしまう。そうしていると徐ろにホークは彼女の耳元に顔を近づけ、低い声でこうささやいた。

「……すまねえが、あまり騒がないでくれねえか。乱暴な真似はできるだけしたくねえ」

 確かにそんなことを言ったのだった。アイシャは心の中では

 (もう、してるじゃない。これは乱暴じゃないの!?)

 と心の中で反論したが、声に出すことはできなかった。その低くとも迫力を感じさせる声に圧倒され、少しだけ恐怖を感じてしまったからだ。

 そう告げると男はすぐに、再び少女の耳やあご、そして首筋に唇と舌をゆっくりと這わせていった。特に耳朶を甘噛みされ舌を差し入れられると、少女の口からは独りでに「ひぁあああぁっ!」とおかしな声が溢れだしてしまう。そのたびに全身の毛が否応なしにぞくぞくとよだち、寒気とも快感ともつかない感触が体中を駆け巡っていく。

「やめ……、はぁっ……あ……っやだぁっ……ああん……っ……」

 今まで味わったことない奇妙な感触に、どんな反応をして良いのか分からないアイシャだったが、耳孔やうなじに舌を這わされると、微かに肌に当たる髭の堅い感触と合わさって、口から今まであげたこともないような声が勝手にどんどんと溢れ出る。その声に自分で(これは自分の声なの?)と驚き、困惑を深めていった。

「ね……、おねが……や、やめて……あたしこんなの、イヤ……あっ…………」

 ホークは少女の言葉などまるで聞こえないかのように無言で、彼女の衣服を手際良く脱がせ始めていた。襟を合わせて腰紐で結わえてあるだけの民族衣装は少し厚着であったが、割と簡単に前を肌蹴させることが出来た。

「ほう……?案外、あるんだな」

 厚着をしていてあまり分からなかったが、露わになった少女の白い胸元が思ったより豊かだった事に男は少し驚き、口端を上げている。

「いや、やだぁ……恥ずかしいよぉ……やめてぇ……うっ……ううっ……」

 恥ずかしさと恐怖が頂点に達したのか、少女はとうとう嗚咽交じりの声をあげて泣きじゃくりはじめてしまった。今日出会ったばかりの男に唇を奪われ、さらには胸を見られるなんて。こんなことがあってもいいというのか。

「どうして、こんなことするの……あたし、何か、ホークさんに悪いことをしてしまったの……?謝るから、許して……ぇ」

 涙声でアイシャは必死に訴える。すると、ホークは徐ろに顔を上げた。そしてその大きな瞳から流れる涙にそっと指を添えて、拭うような仕草をしながら、その瞳を正面から見つめながらこう言った。

「俺は、嫌いな女なんか触りたくもねえよ。お前が……好きだ。こんな形でしか示せねぇがな……」

 男の表情は少女から見ても真剣に見え、嘘をついているようには思えなかった。騙そうとして調子のいい事を並べようとしているといった感じでもない。乱暴な言葉を使うでもなく、穏やかな口調で自分を好きだと言っているのだ。だがアイシャはその言葉を聞き、更に混乱を深めるばかり。

「そんな、ウソ……だって、今日出会ったばっかりなのに、……好きなんてそんなこと……ひゃあっ」

 彼女の言葉が終らないうちにホークは、少女の乳房を手のひらで包むようにそっと愛撫し、その先端を舌先で優しく吸い、舐め上げていった。柔らかだったそれはすぐに固くなっていく。

「ひっ……や……ぁ……んん……あぁっ……なにこ……れ……やぁぁ……」

 頭や常識で考えて、非道いことをされているとわかっていた。しかし容赦なく、そして理屈抜きに襲いはじめる経験したことのない優しい快感の波に、今自分は確実に呑まれようとしている。そんな自分が嫌で、快感を振り払うようにまた男の背中を力なくやめてと言いながら叩いたりした。叩くというよりは実際は力がほとんど入らないものだから、振り上げた腕を重力に任せて振り下ろしているといった具合だ。しかしやはり男は全く物ともせず無駄なことにすぐに気づく。それでも叩き続けていると、頭に手が当たり、彼の頭部を覆っていた青いバンダナがずれて、ベッドにふさりと落ちた。

 それを見て男はにやりと笑みを浮かべて上体を起こすと、バンダナを部屋の中に置いてある椅子の方に投げてしまった。そして身にまとっていた同じ色のコートも一緒に脱いで同じ場所へと投げ捨てたのだ。アイシャはその行動を見て、さらなる恐怖を感じた。それらを脱ぎ捨てたのは、彼が本気になったということだと直感的に分かってしまったから。

「や……たすけ……て」

 全く力が出ていなくても、とにかく彼の体に手を当て続ける。しかし再びアイシャに覆いかぶさったホークはその手をいとも簡単に取り、少女の手指にゆっくりと自分の指を絡めながらベッドに組み敷いた。そして一度だけ深く息を吐き、こう言ったのだ。

「嘘じゃねえ。今日初めてお前を見た瞬間」

 男の目は真剣に、少女の瞳を捉えた。

「……脳天に稲妻を食らったみてえになったんだ。思い込みかも知れねぇが、生まれて初めてだった。あんな感覚は―」

 そう言うと再び男は、組み敷いたままアイシャの柔らかな胸に、再び舌を這わせ始めたのだ。

「やぁ……っ…………だって、そん、な……こと……はぁ……あっ……信じら、れ……」

 アイシャは、そんな彼の言葉にただ困惑していた。本当にそんなことがあるんだろうか。だけど、完全に嘘だとも言い切れない説得力も感じていた。それでも自分は少なくとも彼のことをただただ自分を『どうにか』しようとしている侵略者にしか思えなかった。誰が見たってそういう状況なのである。好きだと言いながらそんな最低なことをする意味が少女には全く理解できなかった。

 男は組み敷いた手を一度離すと、彼女の脇腹から腰へとどんどんと手を滑らせていきながら、徐々に腰から下全ての衣服をゆっくりと肌蹴させはじめていく。腰からお尻、そして太腿に彼の手指がそろそろと這ってきて少女はやっとそのことに気づいた。

「やめてぇ……そっちは……やめてよぉ……だめぇ……!見ないで……」

 涙声で懇願するも、抵抗する力はやはりまるでなく、また、彼が聞き入れるわけも無く、もはや男の成すがままにされている。少女の瞳からはいつしか止めどなく涙が零れていた。

 ―どうしてあたしがこんな目に?最近はそんな風に思う事ばかり起こっていた。あたしなんて、きっともう神様に見捨てられてるんだ……。

 絶望したアイシャは観念したかのように抵抗をやめると、手で顔を覆い、力なくすすり泣きを始めてしまった。

 ホークはそんな少女を一瞥すると、顔を曇らせ小さく舌打ちした。その音はアイシャの耳にも入り、一体何が気に入らないのと困惑するばかり。

 そしてホークはひと呼吸置くと、再びゆっくり服の中へと手を差し入れめくり上げていき、胸から順に、みぞおち、へそ、そして下腹部へと、その白く柔らかな肌に舌を這わせていく。生暖かい感触が徐々に最も敏感な部分へ迫って行くのを感じると、アイシャはやはり陵辱を受けていることを再び思い出したように、思わず悲鳴をあげていた。反射的に両脚を固く閉じようとする。

「やぁ……ぁ……!そこはや……だめ、やめ……て」

 その抵抗も虚しく、容赦なく男は少女の両の膝をを少し持ち上げると、ゆっくりそれを開き、秘部を露にさせたのだ。

「やぁっ、見ないで!お願いっ、いやあぁっ」

 アイシャの叫びなど物ともせず、脚を持ったままその顔を彼女の見られたくない場所へと近づけると、そっと舌を這わせた。すでにしっとりと湿り気を帯びている花弁の蕾を舌でなぞり、舐め上げる。これには少女も快感を感じずにはいられなかった。

「あっ!?………やぁ……そんな……トコ……舐めっ……いやあぁぁっ……」

 身体をくねらせ、自分でも信じられないほどの甲高く、鼻にかかった甘い声が喉から勝手に漏れていく。想像もつかないような行為を受け続けた少女の頭は真っ白になった。彼の舌がチロチロとうごめく部分がやがてじんじんと疼き、体中の感覚が全てそこへと集中していくような感覚に陥っていく。彼の舌が動くたびに快楽の度合いは加速していき、声も息遣いも激しくなっていく。

 そしてホークが彼女の蕾を唇の先で吸い上げるとたまらずアイシャは身を捩りながら「ああああああ!!!」と快楽に悶える鳴き声を上げた。さらに男の舌は花弁をかき分け、その奥まで侵入してきた。まだ誰にも侵入を許したことない、触られたことすらないその場所に。

「やぁっ……、うぅ、んっ…………!ヘン、なにこれぇ……!」

 愛液と唾液が入り交じり、ぬちゅ、ぬちゅと卑猥な音が深夜の部屋に響き、同時に自身の口から勝手に溢れてくる掠れた甘い喘ぎが入り混じって、アイシャはもう何がなんだか分からなくなっていった。頭の中はまるで霞がかかったように真っ白になり、ただただ受けている行為の悦楽にだけ神経が集まっていく。

 不思議なことに、彼の愛撫を、言葉を受け続けるに連れ、だんだん快感のほうが勝ってきて心から拒絶する気持ちは薄れていきつつあるのに、アイシャは気付き始めていた。抵抗しなければ、逃げなければという気持ちに相反し、このまま快楽に身を任せたいと思う気持ちがどこかで勢いをまして芽吹いていくことに、戸惑いと嫌悪を抱きながらも、躰は快楽を求めてやまず、全く言うことを聞いてくれなかった。

 

 唾液と愛液で溢れるほどに満たされたその花弁から、男は一度舌を離した。すると、粘る液体が数センチに渡り糸を引いて、白いシーツと彼女の太腿に絡みつく。少女の顔を見ると、恥かしさと快感と興奮によってか、顔は赤く上気し、甘い悲鳴を上げ続けて疲れたのか、少しだけ開いた口元から、小刻みに荒い息が漏れている。目は涙が零れそうなほどに潤んで、トロンと半開きになり、体はベッドに張り付いたようにぐったりと力を失って荒い息遣い合わせるように上下していた。

 その姿を見たホークは、上体を一度少しだけ起こし、両腕でアイシャのアイシャの頭をそっと包むようにしゆっくりと髪を撫でた。そして自らの額をアイシャの額にくっつけて

「アイシャ、お前今すごく、かわいいぜ……」

 絞り出すような掠れた声で漏らした。その低く鼓膜に染み入る声は、何故だか少女の胸を甘い痛みで締め付け始める。同時に、なぜかまた涙が溢れた。

 

 ホークは、一度体を起こすと、左手でアイシャをなだめるようゆっくりと腰の線を撫でながら、口に纏わりつく彼女の愛液を右手の指で拭うと、ちゅっと音を立てて軽く吸った。そして、再び彼女の上に覆いかぶさり、アイシャの頬を愛おしげに撫でながらゆっくりと顔を近づけ、少し遠慮がちに数度彼女の唇に自分の唇を軽く重ねて啄むようにちゅっちゅと吸いつくと、彼女が特に拒絶の反応を見せないことを確認してから、本格的にその小さな唇を吸い上げる。小さな口内に舌を滑り入れると、彼女の舌もそれに反応し、僅かに絡み付いてきた。その震える細い腕も、男の首もとに躊躇いがちにだが絡めはじめていた。

 ホークはそんな彼女の唇を夢中で貪りながら、右手を少女の十分に潤った秘部に滑らせ中指で再び蕾を愛撫し始めた。

「ふぁあっ!……やぁぁあっ、あっ、あっ!あう……あふっ……!」

 赤く充血し硬く膨らんだ蕾は、柔らかな舌で刺激した時よりも顕著に快感の反応を見せていた。そして十分に潤い滑る花弁にまるで導かれるように、ホークは中指をそっとその裡(うち)に潜り込ませ始めたのだ。

「いやっ!?……いたっ……いっ!」

 アイシャは驚いた。さっきの舌の感触とは全く違い、彼の指の、太くて固いこと。それが肉ひだをかき分けてきた瞬間少しだけ痛みを感じ、小さく悲鳴を上げた。その様子を見たホークは(まだ、経験ねえのか。)とうれしいのか、一瞬だけ口端を上げた。(……にしては、よく濡れやがるな。そうか、……アレのせい、か)

 そして、ゆっくりと、痛くないように気を使いながら滑り込ませる。これほど蜜を滴らせていてもその秘肉は使われていないせいか、まだまだ固い。その粘膜の中はとても熱く、かすかに少女の呼吸に併せて蠢いている。そして徐々にその指を根元まで滑り込ませると、ゆっくり丹念にその中の感触を愉しんだ。

「あっ……はあっ……あっ、……なんだか……ヘンな感じ……!あぁ…あぁぁっ…あん…あう……ん……」

 感じた事の無い違和感がアイシャを襲う。しかし、その指が少女の中に経験したこと無い欲求を徐々に引き出していくさまを、ホークは見逃すはずもない。緩急をつけて指を滑らせると、アイシャの口元からはさっきまでの痛みと恐怖の入り混じった悲鳴は消え、甘く切ない吐息だけを紡いでいった。同時に愛蜜が止めどなく溢れて、アイシャの中をとろけさせていったのだった。

 

 (……どうして、私はこの人を受け入れているんだろう)

 快感に身悶えしつつもアイシャは心では悔しがっていた。しかしその一方で、もう少し……もう少し、もっと身を任せてみたい……もっと先へと進んでみたい……という欲望も芽生え始めていることもとっくに気付いている。何故そう思うのか。あたしは、この男に陵辱されているというのに。

 けれどこの人は一度も怒鳴ったりといったことなどしない。『乱暴な真似はしたくない』という言葉を証明定するかのように、時には優しく甘い言葉で愛してくれていた。だからだろうか。普通は好きでもない男にこんな事をされれば恐怖と嫌悪でたまらなくなるだろう。しかし、彼に巧みに手や口を使って愛撫をされていると、頭が真っ白になって、もっとしてほしいとすら思っている自分がそこにいたのだった。そんな自分に嫌悪したり、困惑したりしながらも、新たな快楽を与えられると、それらの疑問や負の感情はすべて白くはじけ飛んだ。

 数分に渡りホークが少女の蜜壷をかき混ぜているうちに、クチュ、グチュ、と湿った音を立てはじめ、その響きは段々と大きくなっていった。やがて彼の指先は少しずつ『料理』の手段を変えていった。少し指を回してみたり、間接を少し曲げてみて、ゆっくりと動かしていくと、あるところで

「ああんっ……!」

 と、アイシャがひときわ大きく身体を震わせて声を上げ、反応する箇所があった。

「なるほど。アイシャのは、此処か」

 男はニヤリと笑った。まるで、宝を探し当てたかのようなうれしげな顔に見えた。そして、その見つけた箇所を徹底的に責め始めたのだ。アイシャは身体をねじって、その壮絶な快感に反応していた。

「やだぁっ……待って……!……これぇ、何……やっ、やぁっ!あっあっ」

 困惑を隠さず、アイシャは悲鳴に近い声をあげて、快感から逃れようとして体をずらすようにシーツの上で藻掻いていた。ホークは、「初めてなら仕方ないが、怖がらなくていいんだぜ」とだけ告げ、あまり彼女が動かないようにと、左の腕でしっかりとアイシャの肩を抱き締め、右手で愛壷の中の料理を続けた。何度も何度も、何度も何度も同じ動きを繰り返す。それだけなのに、少女の顔はだんだんと上気していき、息も荒くなっていった。

「やっ、あっ、あっ!何……か、おなか、来るぅ……!あっ……あっ、やあっ、や、ああ、あーーっ、あーーーっ!」

 やがて、少女は甘い絶叫を上げながら、いつの間にか無我夢中で男のたくましい身体にしがみついていた。その細い手で男の服を握り締め、その絶頂の快感に耐えるしかなかった。男の指をくわえ込んだ粘膜は激しく痙攣し、その指をきつく締め上げる。指の動きは止めたものの、その状態のままじっと暖かな粘膜の中で少女の初めてであろう絶頂を味わっていた。

 

 やがて彼女の中の律動の間隔と締め付けが緩やかになった頃、ようやくそこからゆっくりと指を引き抜く。アイシャはその瞬間「あうっ……」とかすかな吐息を漏らした。べったりと指に絡みつき、滴らんばかりの勢いの蜜を味わうように舐めあげ、胸元で顔を埋め息を乱したままの少女を抱きしめた。

 静かな部屋にはぁ…‥はぁ……という小さく、甘い吐息だけが響きわたる。

 彼女は自分に起こった信じがたい状況と快感に言葉と思考を失い、目を開けることすらままならない。閉じたまぶたの隙間からも涙は止めどなく溢れていたが、自分でもこの涙の正体がわからなかった。

 

 激しい快感により乱れた息もようやく整った頃、アイシャはゆっくりと目を開けた。するとそこには、左の腕で自分を抱き締めたまま、右手で髪を撫でている精悍な男の顔があった。彼はびっくりするほど穏やかな顔をして少女を真っすぐな目で見つめていたのでアイシャはドクン、と心臓が跳ね上がるのを感じたが、突然恥ずかしくてたまらなくなり、「や……」とつぶやいて、寝返りを打って男に背を向けた。すると彼女を逃すまいという具合に彼の両腕がアイシャを包み込むと、ホークは彼女の髪に、肩に唇を這わせ、愛おしげに愛撫を続ける。それは荒々しさを感じさせず、あくまで優しくゆっくりとした動作。その行為は、まるで恋人のそれだった。アイシャもなぜだか、ホークのそんな仕草に胸がきゅんきゅんと締め付けられるような感覚が襲う。一度は落ち着きつつあった心臓の鼓動はまた早さを増していった。少女はそんな自分に困惑し、どうしていいかわからずその場で固まってしまうほか、成す術がみつからなかった。

 

 

「あ、あの……」

 静かな時間が流れていた。行為が終わって大分時間が経っていた。正確にはわからないけれど、小一時間は経っているだろう。その間ホークは自分を離すことも、髪や体へのゆっくりとした愛撫を止めなかった。そんな中、唐突にアイシャは掠れた声を発した。

「ん?どうした」

 頭の後ろで男が落ち着いた声を返してきたことに何故か安堵し、アイシャはどうしても聞きたいことを思い切って聞いてみることにした。

「その……終わり?……なの?その、多分、普通……は、あの……」

 言葉を選びながら、恥ずかしそうに言う。

「あ?ああ、そうか、最後までしないのかって事か?……して欲しいのか?」

 ホークは意地悪にニヤリと笑う。

「ちっ、そうじゃ、ないもん!」

 アイシャは顔を真っ赤にしてまくし立てながら、自分の服を直す。全部は脱がずに前だけはだけていたので、寝たまま、抱きしめられたままでも元に戻った。そんなアイシャを見てホークは苦笑をしながら

「最後までしてえのはやまやまだが……今日はやめておく。それは、またな。だけどお前がしてえんだったら、今すぐでもいいがな」

 ホークはそう言いながら、一度アイシャから体を離すと、足元に蹴散らされていた毛布のたぐいを引き寄せた。しかしその直後、アイシャの顔はみるみるこわばる。そしてすすり泣きを始めたのだ。

「どうした?」

 少し困ったような顔をして、彼は尋ねた。

「あたし、どうなっちゃうの……?もう村には帰れないの……?ホークさんはあたしをどうする気なの……?」

「明日にはちゃんとお前を村まで送って行くぞ。約束したじゃねえか」

 事も無げにしかし確かにホークはそう言った。

「え?……だって、今『またな』って」

「確かに俺はお前を村まで送り届ける約束をした。そしてその約束は必ず守る。それは俺の信条だからだ。だがその先のことは何も約束なんかしてないだろう。つまり、俺がその村からお前をさらって行ってもそれは約束にない、俺の勝手だ」

「勝手って……!そんな事……」

 ホークの言葉を聞いて、アイシャは背筋に冷たいものを感じたが、この状況でも確かに村に送って行ってくれると言っているからには、多分その言葉は真実だろう。不安を覚えているアイシャを気遣うように、

「そういうわけだから今日はもう寝ちまえ。明日は早いからな」

 彼はそう告げると毛布を彼女にそっとかけてやり、自分もその隣ですぐに寝息を立て始めたのだった。

 よく見てみると、この部屋のはベッドは普通より大きめだった。つまりダブルベッドの部屋。ホークは最初からこのつもりでこの部屋を自分と一緒に取っていたのだろう。

 アイシャはそんな男の寝息を聞くと一抹の怖さと同時にみるみる怒りのような感情が湧いてきた。だが、疲れなどもあってか突然猛烈な眠気に襲われ、瞼が重くなっていく。こんな時に眠気なんて感じる自分も自分だ、とも思いもしたが、疲れにはとうとう勝てなかった。

 目を閉じるとさっきまでの行為の感覚がじわりじわりと蘇り、胸もなぜか痛くなる。そしていやというほど指でかき回されたところもまだ脈を打つように快感の残滓が残っていた。そんな自分が嫌で、それらをかき消すように目を固く閉じると、涙がこぼれた。

 

 そして、いつの間にか少女の意識は闇へ落ち、やがて朝を迎えた。 

Last updated 2015/5/1

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