top of page

back   |  next

YOU COULD Be MINE.
Romancing Sa・Ga.

13. 長い夜、永遠の夜。

 夜が更けても尚水晶亭では音楽が鳴り響き、大きな歓声が巻き起こっていた。きっとバーバラがもうひと踊りを披露しているに違いない。

 

 二人はそんな喧騒とどろく水晶亭を、仲間に見つからぬよう抜け出して宿へと向かった。

 今日は客が少なく、何時もは多少人がいる受付けのロビーも寂しくがらんとしていた。ここに泊まっている客は、水晶亭であのニューロードで評判の踊り子のショーが見れると聞きつけて、殆どの人がそちらへと出ているらしい。「私も見に行きたいのになぁ」と悔しがる受付の男は少し不機嫌そうにも見えた。

 

 二人は手早く一部屋を取って、部屋に入るとすぐに鍵を閉めた。

 そしてすぐにホークは、部屋に灯りを入れる間もなくアイシャをそっと抱き寄せると低い声で、しかし穏やかな声でこう告げた。

「もう一度聞くが」

 アイシャは不安げに、銀色の月光しか差さない暗い部屋で、自分を包むたくましい腕を頼りにその主の顔を見上げた。

「俺が帰って来ないほうが、お前は良かったか?」

 彼には珍しい、弱気とも取れる言葉であった。

 アイシャはどうして彼がそんなことを突然言うのか解らず、首をゆっくりと横に振ることしかできなかった。そしてしばらく考えた後、

「あたし、そんな事絶対に思っていないわ。現にみんなが湖に旅立ってしまった後……不安で、寂しくて、気が気じゃなくてたまらなかったもん……」

 アイシャは項垂れながらも手持ち無沙汰であったのか、ホークの胸元に手を遣り愛おしげに撫でながらそう告げる。

「そいつは、俺が万一いなくなればお、前と一緒にお前の村の者達を探してくれる道具がなくなるからか」

 その言葉を聞いて、アイシャはまるで頭を殴られたかのようなショックを覚えた。

「どうして、どうしてそんなことを言うの!?」

 アイシャは激高したように叫び、踵を返すとがっくりと膝を落としてベッドに突っ伏してしまった。

「あたしには、ホークさんしかいないの。そんなことが目的だったら、とうにカヤキス……ナイトハルトの元にでもどこへでも行ってる。でも、あたしはホークさんがいいの。ホークさんじゃなきゃだめなの!」

 気持ちを吐き出すように、アイシャはベッドに突っ伏したまま叫んだ。どういうわけか、そんなアイシャを困ったような、あるいは憐れむような顔つきで見つめたまま、ホークは微動だにしない。アイシャは続けた。

「確かにあたし、ホークさんやみんなのことを待ってる間、あたしはあなたが言うようなこと……みんなが帰ってこなければ自分の都合が悪くなるから不安なのかもしれないとも思った。でもね、あたし、ホークさんがもし死んでしまったら……なんてことが脳裏を過った時、すごく胸が締め付けられて、泣きそうになって、耐えられなかった。ダメと言われてもついて行けば良かったって後悔した。あたし、例え村の皆が見つからないって知っていたとしても……ずっと、ずっとホークさんの傍にいたいって、気づいたの。……本当よ」

 涙声で、アイシャはその想いを告白をしていた。その言葉にはきっと嘘などないだろう。

 ホークは少し間があってからひとつ強く息を吐き出すと、静かにアイシャに問うた。

「……俺は、お前に散々非道いことをした。それも、女が受けることの中では最悪の部類のことをだ。どうしてだ、そんな俺がいいだなんて、どうして思える」

 眉間に深いシワを寄せる。それはアイシャから見ると、彼が怒っているようにも見えた。

「それは昨夜のことなの?確かに、昨夜は怖い思いをしたけど……」

「というよりもだ、そもそも最初の夜から、俺はお前に非道いことをしてばかりだろうが」

 ホークは怒りと呆れが交差するかのような声を上げ、アイシャに問いかけ続けた。

「それは、昨夜もあたしに聞いたよね。確かにあたしは、最初はホークさんに無理やり……ああいうことをされたのは事実だし。他人から見たら、きっとひどくとんでもないことだとも思う」

 アイシャは一度俯いて、何かを考えているように一度口をつぐんだ。その間はほんの短い間だったが、ホークにとっては恐ろしい沈黙の間だった。しかしアイシャはこう続けたのだった。

「……でもあたし、どうしてだかは解らないけど……ホークさんのことをそれで憎いとか、心から嫌だとは思えなかった。最初はとんでもない事されるって怖く思ってはいたけれど、……でも、だんだん嫌でなくなる自分に気づいて……。だって」

 アイシャは恥ずかしそうにしながらも、あの夜の事を思い出していた。

「ホークさん、……とても、優しかったから……。最初は怖かったけど、だんだん愛されてるって、すごく感じられたから……」

「それだけか?そんな事ぐらいで、俺についていこうと思えたのか?」

 ホークは、彼女の答えに少し驚いているようだった。

「変……かな?あたし」

「……いや……」

 ホークはそのまま、ため息をついたきり黙ってしまった。何かを考えているようにも感じたし、それはある種の苦悩を孕んでいるようにも見て取れた。

「ホークさん……どうしたの?」

 アイシャはそんなホークの態度にだんだんと不安感を覚え、思わずベッドから起き上がり、ホークの傍らにゆっくりと歩み寄った。

「俺は、お前に言わなければならないことがある」

 近寄って来てくれたアイシャの頬をそっと撫でながら、ホークは切り出した。

「あの夜、お前によこした酒があっただろう」

 確かにホークはあの晩、瓶に入った果実酒を土産だと言いアイシャにくれた。

「そういえば。でも、それが?」

 アイシャは首を傾げていた。

「あの酒には少量だが、媚薬が入ってたのさ。船を失う少し前にパイレーツコーストで仲間が持っていたやつを試してみろと押し付けられ、そのまま捨てずに懐に入れていたのを思い出してな」

 あの嵐に巻き込まれてもなお懐に収まったままだったことに驚いたが、まるでそれは何かに導かれたことのようにも感じてしまったのだった。

「びやく……?」

 少女はそれを聞いてもきょとんとしていた。それが何のことだかよく知らなかったのだ。

「……それを飲むと、どんな女も目の前の男に惚れやすくなってしまうのさ。酒に混ぜると、全身の感触が敏感になり、感じやすくなって筋力もなくなり、腑抜けになってしまう。目の前の男を受け入れやすい心と身体になるのさ。お前が初めてでもあれだけ気持よくできたのは多分そいつのおかげだ。俺が好きだというのも、おそらくその媚薬の引き起こした錯覚だろうよ」

 忌々しげにホークは吐き捨てるようにそう告げた。アイシャはそんな事実を告げられ一瞬顔色を変えたが、しばらくして男に問いかけた。

「……つまり、あたしは惚れ薬を飲まされていたってことなの?でも、どうしてそんな。どうして、あたしだったの?」

「お前を見た瞬間、モノにしたいと思ったのは嘘じゃねえ。だが、お前はすぐに帰ってしまうというじゃねぇか。散々迷ったが、お前を物にするならその夜しかないと思った。気がついたらあの薬を手にしてたのさ。お前のすべてを奪い去るつもりだった。だが結局、あの夜には最後の一線を超えることは、どうしてもできなかったが……」

 その海賊は自嘲するように嗤っていた。それでもアイシャは納得がいかない様子だった。

「でも、どうして今そんな事あたしに白状するの?だって、言わなければ永遠に絶対に解らないことじゃない。それなのにどうして……」

 ホークはしばらくしてから、吐き出すように言った。

「お前が、真面目な顔をして俺を……好きだというたびに、バカみてえに痛むんだよ、ここが」

 ホークは、握った右手を胸元にやり、ギュッと服を掴むよう仕草をした。

「みっともねえだろ。……つまらねえ良心なんて、とうの昔に捨てたと思っていたのにな。それに、言わずにいればお前が言うとおり、絶対にばれないことなのによ」

 アイシャは苦悶の表情でそんなことを打ち明けるホークに、初めて人間らしい脆さを感じ、なおも愛おしく思い始めていたのをはっきりと自覚した。

「でも、おかしいよ。それ」

 アイシャが口を開く。

「何がだ?」

 アイシャの言葉にホークは眉を顰めた。

「だってその媚薬っていうのは、一体どのくらいの時間効き目があるの?」

 などと唐突に聞くのだ。ホークは、少し考えたが、

「……多分、あの量だと二~三時間ってところだろうな。しかしそれがどうした」

 そう答えるのを聞くとアイシャはふふ、と微笑った。

「やっぱり変だよ。……だって、あたし、まだ、ホークさんの事が好きなんだよ。その薬はとうに効いてないって言うのに、あなたにキスをされただけで力が抜けて……胸が熱くなってしまう。こんなに……こんなに、あたし、ホークさんの事が好きなんだよ……」

 アイシャは言うと、男の顔をまっすぐに見つめた。

「……アイシャ……」

 その言葉に驚きながらもホークは、、嘘がないことを、そのまっすぐな目で確認した。そして、たまらず愛しい少女に手を伸ばすときつく抱き締め、息を強く吐き出し、絞りだすような声で言ったのだった。

「まったく、莫迦な娘だ……お前は。ちょっと気持ち良くされたくらいで、俺みたいな男に惚れやがって…………」

 それはひどく自嘲じみた言葉だった。アイシャは強く抱き返すと、目を閉じた。

「じゃあ、あたしのこと、やっぱり弄んでたの?」

 言葉とは裏腹に、確信に満ちた穏やかな口調だった。海賊はしばし間を置いてからゆっくり首を横に振ると、告げたのだった。

「愛してる。……アイシャ」

 これまで聞いた事の無い、穏やかで優しい彼の声のようにアイシャは思えて、思わず胸が詰まるような感覚に襲われる。

「あたし……も……。あい、してる………………」

 その言葉を発した瞬間、気持ちの昂ぶりが抑えきれず、少女の方から顔を寄せてくちづけをした。そして照れくさそうに、彼の胸に顔を埋めながらはにかんだのだった。

 今度は俺の番だと言わんばかりに、ホークは少女の頬に手をやるとゆっくりと上を向かせて、その小さな唇を吸い上げた。愛しくてたまらない――、それがひしひしと伝わってくるような、丁寧でスローなくちづけ。その抱き締める両腕も、愛おしげに少女の躰の線をなぞり、その柔らかでしなやかな感触を楽しんでいるようだった。

 やがてふたりはベッドへと倒れこむと、互いの衣服をゆっくりと剥がしていった。アイシャの、民族独特の何枚かの着物を着込んだその布一枚一枚を丁寧に脱がしていくと、やがてしなやかで白い肌が見えた。何度見ても美しい。心の底からそうホークは思った。

 普段はこのように厚着をしているので、すこしぽっちゃりとした体型の印象を受けるのだが、その中身は狩りと乗馬で鍛えた肢体が見事だった。それを見て、

「……まるで、チューリップって花みてえだな」

 などと、ホークが突然そんな事を言い出したのだった。

「そのお花は知ってるけど、……一体どこがなの?」

 アイシャは思わず、男に尋ねていた。

「んん……、あの花は見た目丸っこい花だろ?けど中を覗いて見りゃあ、こんなふうに、1本筋の通った細くて白い、立派な芯がついてるからさ……ああ、おかしな事を言っちまった」

 アイシャの服をすっかり脱がし、その身体を隅々まで愛撫をしながら、ホークは苦笑していたのだった。しかし、

「あのお花はとてもかわいいから好きよ。ありがとう……うふふ」

 などと言って、少女は嬉しげに微笑んでいた。その笑顔は鼻に負けずかれんだとホークは思ったのだった。挽回とばかりにその豊満な乳房に舌を這わせると、アイシャは「ふあぁっ……」と甘い声を漏らしながらびくんと微かに跳ねて、その愛撫を素直に受け入れている。

「形が良くて、こんなに感じやすい乳房は花には無いからな……人間で良かったぜ」

 言いながらその舌先で、既に固くしている突起を弄ぶと

「あっ、はぁあ……っん……、ホークっ……ぁ……っ……」

 と大袈裟とも思えるほどの甘い声をあげて、アイシャはたまらずに身悶えしていた。その乳房の周囲も丹念に指と舌を巡らす。時々肌に当たる彼の無精髭で柔肌が削れるような感触も、妙に気持ちが良くて感じてしまっていた。まるで計算されたものではないかと思うほど微かに肌を掠めるのだ。その度に「あんっ!」という甘い声が漏れてしまう。

 その舌は、やがて柔らかな腹を這っていき、へそを通り越し下腹部へと辿り着く。すると一旦少しだけ顔を離して

「……ここ、まだ痛むか?」

 唐突にホークは尋ねてきた。

「え?」

 アイシャは一瞬何のことなのかわからなかったが、どうやら、昨晩の乱暴の事だと理解すると、頭を横に振った。

「ううん……。もう痛くない。大丈夫だよ」

「そうか……、本当に済まなかったな。もう二度とあんなことはしねえからよ……」

 心底申し訳無さそうに彼は告げると、しばらく、彼はその美しい肢体の分岐となる花の蕾である場所を丹念に見つめていた。時折指で花弁や小さな蕾をこねくり回す。そのたびに少女の甘い声が響き、同時に淫らな湿った音もその大きさを上げていった。

「きれいだな、アイシャ。お前の愛液が、赤い毛に朝露みたいに絡まって、きらきらしている。まるで宝石みたいだ」

 アイシャはとたんに恥ずかしくなり、顔を横にそらしたが

「恥ずかしい……でも………なんだか、ちょっとうれしい……な」

 と、小さな、吐息の混じった声で呟いていた。

「本当にきれいだ……」 

 そう言うとホークは突然アイシャの両足を高く持ち上げ、その肩に担ぐような格好になった。

「きゃっ……、やあぁっ……!」

 アイシャはその足を持ち上げられた体勢がことのほか恥ずかしく感じて拒否するような言葉を発してしまったが、ホークがその内側に舌を這わせ始めると、とても気持ちよくてすぐにどうでも良くなった。

 彼はそけい部分から、段々と膝やすね、そして、足の指先まで口に含んでいく。文字通り、頭から爪先まで舌を這わせていったのだった。

 アイシャは足指を口に含まれるという行為が恥ずかしいのと驚きでたまらず、

「やぁっ、そんなとこ、だめだよ……やっ…………あ……」

 と、素っ頓狂な声を思わず上げてしまった。するとすぐに身体を 横向きにさせられ、その背中にもその執拗な愛撫が迫った。

「嫌……か?」

 肩甲骨と背筋、そして後ろ側の首筋に丁寧に舌を這わせながら背後からそっと乳房を手に包まれると不思議な快感がアイシャを襲った。とても安心できて、心が落ち着く。しかし、その愛撫自体も少女の触覚を執拗に刺激し鳥肌さえ立っていた。悶え、のたうちながら息も荒く吐き出すように声を上げ続けてしまう。

「そうじゃないの……嫌っ……ていうんじゃなく……て……、足なんて汚いよ……だからだめだっ……てぇ……」

 いつの間にか耳元に這ってきたその舌が耳の孔に侵入してくると、たまらずアイシャは

「ふああああっ!!」

 と大きな声で悶えてしまう。

「お前の身体に汚いところなんてあるわけないだろ」

 そう言うとホークは背後からアイシャの顔を手のひらで包むと、顔をゆっくりと回させ、くちづけをした。

 顔を離すとお互いの唾液が糸を引いて、重みに耐え切れずにべたりと肌に落ちた。

「はぁっ……はぁ……、ホーク……ぅ……!」

 熱が籠もりトロンと蕩けた眼差しが、男に無言で訴えていた。

 はやく一つになりたいと。

 そしてそれを証明するかのように少女のその手は、自身の背中に先ほどから当たる固く熱い塊に伸ばされていた。その行動はほぼ無意識のように思える。ホークも手を少女の恥部へと伸ばすと、太腿まで蜜を滴らせてそれは溢れ返り、まだかまだかと雄蜂を待ち受けている蜜壷のようであった。

「アイシャ、お前は本当によく濡れるんだな」

 媚薬など使わなくても、いやその時以上に多量の蜜を溢れさせる素晴らしい感度を持つ彼女に、ホークは嬉しさと興奮を抑えきれなかった。

 体勢を変え、アイシャの上にゆっくりと覆い被さった。そしてしばらくその顔を見つめていた。頬に手を伸ばし愛しげに撫でている。その快楽に酔い痴れて上気した『女』の顔にしばし魅入っていた。

「恥ずかしいよ……どうしてそんなに顔を見るの……?」

 アイシャはホークの視線に耐え切れずに顔を反らそうとしたが、巧みに手を添えられ正面を向かせられた。

「お前がすごく、きれいだと思っていたんだ」

 そう言い頬と唇にキスをすると、徐ろに自身を少女の中へと突き入れたのだ。その瞬間アイシャは一瞬身を固くしたが、すぐにそれは奥へと飲み込まれた。

「うっ…………は…………ぁ…………っ!!」

 最初、アイシャは苦悶の表情をしたものの、すぐに切ない吐息へと変わっていった。

「……あっ…………ほー、くぅ…………!すき……はぁっ………すき……!」

 熱い吐息と共に、そんな呟きが漏れる。

 その小さな手は男のたくましい身体に必死にしがみついて、存在を確かめようとしているかのようだった。

「アイシャ……愛してる……。お前は、俺の、ものだ……」

 ホークも、自然とそんな言葉が漏れ出ていた。そして、その動きにさらに熱を込めていく。意図してというよりは自然にこもっていったという感じだ。アイシャの華奢な躰をしっかりと抱きしめ、律動的な動きで熱い蜜壷をゆっくりとした動きでかき混ぜる。

「きつくは、ねえか」

 荒い息を吐き出しながら彼が問いかけてきた。

「んっ……ふう……んっ……。ぜん、ぜん……きもち、いいっ!……すごく……ああん……!!」

 切ない吐息とともにアイシャは甘い声でそれに答える。

「よし」

 そう言うとホークは唐突にアイシャの躰を抱えつつ、上体を起こしベッドに座るような体勢になった。

「えっ……?あんんっ……!!」

 アイシャは少し驚いたが、彼の強い力で自分も躰を起こされるとアイシャは彼の太ももに座っていて、気が付くと二人は丁度向かい合って座るような姿勢となっていた。もちろん繋がったままだ。その体勢で更に激しく突き上げられると、これまでで一番奥まで彼が入ってきたのがわかった。

「んあああああっ……!!!」

 アイシャは無我夢中で彼の首に腕を回すと、ちょうど腰の自由が利く。そうなると自然にアイシャは自らの腰をくねらせ快感を加速させるように動く。そのたびにじゅぶじゅぶと溢れ出た愛蜜が滴りシーツやホークの太ももの辺りまで濡らしていく。その感触と、少女だとは思えないほどの淫靡な動きにホークも興奮が頂点を迎えようとしていた。

 アイシャはだんだんと息も早く荒くなり、一見すると苦悶の表情に顔を歪ませると甲高い声で断末魔の叫びを発していた。

「もう……だめぇっ……!あーーーーーーっ!あぁーーーーーーっ……、あぁ……、あっ……あっーーー!!」

 絶頂の波に併せるように声が漏れ出る。アイシャの絶頂の痙攣で締め上げられ、ホークもたまらずその裡にたっぷりと熱いものをぶちまけた。

 それと同時に二人共ベッドへと倒れ込むと一度深いキスをし、しばらく息を弾ませながら無言で汗だくの身体を抱き合った。

 

 

「ねぇ……、聞いても良い……?」

しばらくして、唐突にアイシャのほうから切り出していた。

「ん?」

「昨夜、どうして、ホークさんがあんなことをあたしにしたのか、やっぱり分からないの……」

 彼女にはどうしても、昨晩の乱暴の事が頭から取れないようだった。無理はない。本当に怖い思いをさせてしまった。ホークは顔を曇らせると徐ろに寝返りを打ち、アイシャに背を向けると、ひとつ深い息を吐いた。

「……お前の身体に、他の男の記憶が残るのかと思うと、たまらなく嫌だった」

 その言葉にアイシャはきょとんとした。そういえば、あの時そんなことを言っていた気もするが。

「ジャミルの野郎から、お前とその、ナイトハルトとの経緯を少し聞いたが……どうも、お前の希望をやすやすと叶えてくれそうにあるのはどう考えてもあいつのようだし、……お前に好意もあるようじゃあねえか。俺としたことが、訳のわからない焦りが沸いたんだと思う……。二度とあんなことはしない」

 アイシャからは、ホークの顔を見ることができずその表情は覗い知れなかったが、アイシャはというと、なぜかその顔には笑みがこぼれていた。

「ホークさん……、それってもしかして『ヤキモチ』ってやつ?」

 少女の言葉に、ホークは「あ!?」と、思わず素っ頓狂な声を上げる。しかし、

「言われて見れば、……そうかもしれねぇな」

 と、照れくさそうに、あるいは観念したかのような小さな声で呟く。アイシャはそれを聞くとますます嬉しくなって、たまらずホークを後ろから抱き締めていた。

「安心して。あたし、ホークさんだけのものだから。どこにも行かないから」

 と、嬉しげな声をあげて耳元で囁いた。ホークは、なんだか立場が逆だな、と思いながらもアイシャの言葉に嬉しく思わないはずは無く、その口端には微かだが知らずと笑みを浮かべていた。

「あとね、もうひとつ……」

「まだ、あんのか」

 背中に吐息を感じながら、ホークは苦笑していた。

「あのね、もしあたしが、ホークさんにただ繋ぎ止めたいというだけで……、ホークさんに……抱かれた、って言ってたら、……ホークさんはどうしたの」

 その問いには、男はしばらく沈黙した。

「やっぱり、嫌いになった?」

 いちいち聞くなよ、そんな事。男は言いたかった。答えは決まってる。

「言っただろうが。惚れたのは俺のほうだ。その程度で嫌になってたら、今までこの俺は生きて来れなかったろうよ」

「……」

 アイシャは、なんと言って良いか、言葉に詰まる。

「ただし―」

 ホークは続けた。

「媚薬の事は、内緒にしていたかもな」

 それを聞くと、アイシャは彼の背中に顔を埋めてしまった。そんなこと、知ってても、知らなくても、多分大きな問題ではないのに。アイシャはこの自分より一回り以上も年上の男が愛おしくて堪らなくなっていたのだった。

 

 本当は、心のどこかで「計算だった」と言って欲しかったかもしれない。そちらのほうがおそらく罪悪感から解き放たれ、いくらか気分が楽であったかもしれない。

 それでも、いやしかしだからこそ、この純粋な少女に初めて逢った時よりも今はより激しく心が揺さぶられているのは事実だった。離したくない。絶対に。

 ホークは再び寝返りをうつと、少女の細い体をぎゅうと抱きしめ、眠りに落ちたのであった。

 

 

 

 

 一方その頃、水晶亭では。

 

 開店以来とも言えるほどの盛況だった店もたたむ時間となったのは、もう東の空が白もうとする時刻だった。

「やれやれ……今日は本当に疲れた……。しかしあんたのおかげで儲かったよ。雇い賃を払うからまた明日からも出てくれないかい?」

 水晶亭の亭主は興奮冷めやらぬ表情で、バーバラのマネージャーであるエルマンに依頼をしていた。

「でも気の移ろいやすい人ですから、私の一存で決めてもすぐに破棄しちゃうんですよね、お姐さんは」

 と、苦笑しながらエルマンはバーバラが壊したグラスなどの後始末をしながら言った。

 あのあと、バーバラの踊りは盛況で、バーバラ自身も上機嫌で勢い余って皿やグラスを壊しまくっての大ステージとなっていた。

「もちろん、お姐さんが破壊したお皿なんかは弁償しますよ」

 と、破片を分厚い紙袋にジャラジャラと入れると、ふうと一息ついていた。

「いやいや、それを上回る利益は出ているから心配しないでください。それに、ご本人は悪気があったわけではないでしょう」

「さぁて、……どうだか。あ、片付けぐらいはせめてやらせてください」

 エルマンは意味ありげに笑った。

「ああ、あと三時間もすれば朝飯の時間だが……私はちょっと寝させてもらうよ。昼まえに起こしてくれ。朝はシェリーさんに任せておけばいいから」

 夜から入ったバーテンに命じて、ふらふらと店の奥へと消えていった。

 (バーバラが毎晩来てたら、あのマスターはきっともたないな……)

 と、エルマンは思った。

 そして、彼がゴミを捨てようと表に出ると、水晶亭のそばにある酒樽に腰を下ろしてバーバラは夜風、いや早朝の空気に当たりながら、煙草をふかし、なにかを考えている様子だった。

「まだ、お休みじゃなかったんですか?」

「あー、エルマン。私ね、あんまり気分が良くて寝られやしないのよ」

 笑いながら、バーバラは煙草をふかしている。そして、遠くに目をやり、しばしまた無言で何かに想いを馳せていた。その視線の先には、宿がある。

 明かりがついている部屋はひとつもないが、確実にひとつの窓に目を遣っているようにも思えた。

「……あの方、ですか……」

 エルマンは、バーバラに聴こえるか聴こえないかの声で呟いた。

「その通りよ、エルマン。まあ、過ぎたことだけど……」

 バーバラはフッと微笑うと、初めてその男と出会った時の事を思い出していたのだった。

Last updated 2015/5/1

back   |  next

bottom of page