YOU COULD Be MINE.
Romancing Sa・Ga.
10. しるし。★
「どうした、何か、あったのか?」
ホークはできるだけ冷静に問いかけたが、アイシャは何も応えずただ無言でホークの胸元で、涙を流すばかりだった。
「しかたねぇ、ここでは話しづらいなら……」
と、ふたりだけ宿に引き返す事にしたのだ。シフとジャミルは城の傍に残り、グレイとクローディアは途中までホークとアイシャと一緒に宿の近くまで来たのだが、二人は水晶亭へと入っていった。
まだ時刻は昼。部屋用意できるかと受付に尋ねた所、生憎今はどの部屋も掃除中などと言われる始末だ。中まで行ってみると確かに宿の部屋は窓が開けられ掃除婦がシーツを取り替えていたところだった。ホークがアイシャの身体を抱えながら開いたドアをノックすると、年配の掃除婦は「なんだい?まだ掃除してるんだけど」と愛想なく告げる。
「わりぃな、この娘が気分が悪いと言うから、ちょっと休ませてやってくれるかい」
ホークは言うと、銅貨を二枚掃除婦の手に握らせた。
掃除婦は、「そりゃあ、仕方がないね」と苦笑いと笑みを浮かべ呟くと掃除道具を手早く片付け部屋を出たのだった。
アイシャはその掃除婦が出て行き部屋に施錠すのを見るとすぐに、ホークに抱きついて押し殺していた声を解き放ったように大きな声で泣き始めたのだった。
アイシャは驚くほど涙を零し、泣きじゃくっている。
ホークは何も言わずに、ベッドに一緒に座り少女の傍らで泣き止むのを待っていた。
いつしか戸外は、陽光を完全に遮断する黒い雲が垂れ込め、まだ日は天辺だというのにまるで夕暮れのような暗さとなり、やがてまるでアイシャの涙雨に呼ばれたように、雨がざあっと降り始めた。
気がつくと、その頃にはアイシャの涙も上ずった涙声も聞こえずホークはふとアイシャの顔を見た。泣きやんだか、と。すると次の瞬間、少女の方からホークへと唇を押し付けてきたのだ。
その小さな唇と舌が積極的に、しかしたどたどしく男の唇を貪る様はすぐにホークの興奮を呼び覚ました。それに答えるかのように応戦し、少女の口の中に舌を滑らせお互いの粘膜を求め合い、口内の蜜の甘い感触を享受しあった。興奮の度合いを増したホークは少女の躰をベッドへと沈めるがそれでもなお、唇を繋げたまま激しくそれを求め合い続けた。
しばらくして漸くお互い口を離すと、アイシャは虚ろな眼差しを目の前の男に向け、
「はぁっ……………………。キスって……どうしてこんなに、素敵なの……」
と思わず呟いていた。そして、
「だけど多分それって、ホークさんとだけ……。……………あいつのキスなんて、最低……」
絞りだすようにそんな言葉を思わず吐いていた。それと同時にまた、ホークの胸元に手を回し、再び唇を重ねようとする。だがその言葉を聞いて海賊の動きがぴたりと止まったのだ。
「何をされた、その殿下とやらに」
ホークは努めて冷静にアイシャに尋ねた。しかし、その声はいつもよりも低いトーンとなり、明らかに怒気を感じさせるものだったことに、彼女は表情を強張らせる。
「そんなこと、聞かないで。いや……思い出したくない」
と苦しそうな声を絞り出したがホークは容赦しない。
「今、自分から仄めかしただろうが」
ふたたび、キスをしようと抱きついてくるアイシャを避け、しつこく質問した。
「言え。何された」
「……」
しばらく無言で横を向いていたアイシャだったが、
「……アイツに、もう少しで…………されるところ、だった……」
ようやく観念し、そう白状した。
「奪われたのか、この唇を?」
声こそ低かったが、全く表情を変えずに尚も質問をぶつけ続けてくる。だがそのことが、却って凄みを増していた。
「うん。……でも、途中にあった噴水で、気持ちが悪くて口を濯いだ………ん……っ」
少女がやっとの思いでそんな言葉を吐きだすや否や、今度は突然ホークの方から乱暴に口を塞がれた。舌をやたら強引に差し入れられたが、ナイトハルトの時のように嫌なんて思わなかった。歯の裏の粘膜を刺激されると体が震える。わざとらしく唾液をピチャ、クチュ、と音をさせるのも嫌じゃない。むしろひどく官能的で、ゾクゾクと震える感覚とともにまたあの部分が疼いてくる。自分で濡れてくるのがわかるようだ。
「他にどんなことを?」
ホークはしつこく口を一瞬離すと、また聞いてくるのだ。
「……。ゆ、指で…はぁ……」
そんな事を言わされるなんて、とアイシャは激しく動揺したが、何故かそれを口にしようとすると、嫌な気持ちとは裏腹にやたら淫靡な気分が増してくるのを自覚していた。
「指で……あの部分を……すこし……さわられ……て」
段々と、息が荒くなるし、心臓はまるでウサギのように速く鼓動していた。しかしその事を言った時にだけあのナイトハルトの指を思い出し、背筋に気持ち悪さ……いわゆる虫唾が走った。
「ここか」
ホークも容赦なく、アイシャの太股に手を差し入れるといつものようにゆっくり焦らすようなことをセず、まっすぐに下着の中へと手を入れた。
「あっ……あ……う、うん……でも、あたし」
乱暴というか乱雑というかそんな荒々しい手つきで秘部に指ほ差し入れられる感覚にアイシャは心底戸惑い、少しだけ怖いとも思い始めた。
(怒ってるのかな……ホークさん……)
だけどそれは多分、軽はずみなあたしのせい……と、アイシャは心を痛めた。
「あた……し、ほんとうに、触られたけど……ン……、本当に嫌で、嫌で、やめてって精一杯叫んだの…………ぁはぁっ!」
その瞬間、すぐにホークの指は、アイシャの中に侵入してきた。
もうすでにじっとりと其処は潤ってはいたのだが、あまりにも強引かつ突然のことに、アイシャは軽く痛みを感じ、そして軽くショックすら受けていた。
「や……痛い……痛いよぉ……」
アイシャは懇願するように、ホークを見た。
「そして、どうなった?」
まだまだホークの質問は止まらない。もはや尋問のようであった。
「あう……うっ……。触られたのは……少しだけ……で、そこに兵士の人が、部屋をノックして、助かったの……。本当だよ、それ以上何もされていない……はぁ……はぁあ……っ!」
すでに強引な彼の手戯さえも快楽へと変わっていた。乱暴にねじ込まれた指さえ、もうとても足りないと言わんばかりに愛の蜜が溢れ、其処から粘液がかき混ぜられる湿った音が響いている。しかしホークはそのことにすら苛立ちを感じていたようで
「そいつを思い出して、濡れてるのか」
ホークは意地悪に性器を眺めながら言った。たまにクチュ、クチュとわざと音が出るように其処を弄ったりしながら。それにはアイシャも怒り、そして悲しみを感じ、
「違う……!あたし、本当にあんな人嫌い!!」
言いかけて、はたとナイトハルトの言った事が頭を掠めた。
―あのような者達は、悪戯に女を弄ぶ。心まで落ちたら、路傍に捨てられるのがオチだぞ。
そんな事を、しかもナイトハルトの言葉など真に受けたくもないけど、今ホークに見捨てられたら、自分はどうなってしまうのか、アイシャは考えるだけで強い不安に駆られ、じんわりと涙がこぼれた。
その間も執拗に性襞を弄っていたホークだったが、指を唐突に引き抜いた。
「じゃあ聞くが、そいつと俺と何処が違う?俺もお前を無理矢理にモノにしたんだぜ」
アイシャはそう言われて戸惑うしかなかった。自分でも、わからない。ただ、心が嫌だと思ったナイトハルトと、受け入れても安心できると思えてしまったホークとの差。それしかアイシャはわからなかった。
だから正直にそう言うと、ホークはしばらく考えていたようだったが、「そうか……」と呟いた。
「しかし、オレを信用を丸きりしたわけじゃないだろう?」
「してるわ。あたし、ホークさんしか……いないもの」
「本当にか?」
「うん」
ホークは一度、彼女の傍らに横になると、抱き締め頬にくちづけた。
「だが……、やはり他の男の痕跡が、お前の中にある思うと不愉快だ……」
言いながらホークは、アイシャの乳房を弄ると、やや乱雑にその先端に吸い付いたり、甘噛みをしたりした。先日とは大違いの動きに時折痛みを伴い、たまらずアイシャは悲鳴を上げる。
「ひ……やんっ…………ホークさん、怒ってるの?あたし、どうすれば……いいの?」
アイシャは涙声で言う。するとホークは上体を起こすと、
「お前は何もしなくていい。俺がお前の体から、他の男の記憶なんて消してやる」
そう告げると、アイシャの両脚を開かせると躰を差し入れた。そしてズボンのベルトを素早く外したかと思うと、予告もほぼないままに少女の体を昨夜同様に貫いたのだ。
「いっ……あっ、いた……っっあぁ、はぁっ……やぁっ……!や……………………」
やはり、あまりの痛みにアイシャは泣いていた。昨夜と違うのは、今日は一貫して乱雑だった。矢張り挿入もとても乱暴で、経験の浅いアイシャはその肉をえぐられるような痛みに耐え切れず悲鳴を上げていた。
「痛い!や……!くっ……う……っ、待ってぇ……くううっ……………!!!!」
しかし、ホークはやめようとしなかった。アイシャの唇を、五月蝿いとばかりに自分の唇で塞ぐ。
「んーっ! …んっ………」
アイシャは泣きながら、痛みに耐えていた。こんなの彼じゃない。そう思ったが、紛れもなく自分の上に乗って、自分の中で乱暴に暴れているのは彼だった。
(やっぱり、男の人はみんな、こうなの?)
しばらくするとまるで脳みそが麻痺したかのように痛みは少し和らいできたものの、アイシャは絶望感でいっぱいになった。
そしてひとしきり男の動きが早くなったかと思うと、低く抑えた漏れ出るような唸り声が聞こえた。そして、またゆっくりと蠢き彼は大きく息を吐くと動きを完全に止めた。中で精を吐き、果てたのだった。
「…………」
アイシャは動けずにいた。陰部が痛いのと、精神的なショックで動けないのだった。目からは涙が出たが、拭うことも忘れていた。当のホークはすぐに身体を起こすと何も言わずに服を早々と纏っているのが見える。
アイシャも無言でぼんやりとそれを見ていたが、まるで夢のように現実感がなかった。そして、限界とばかりに意識は唐突に闇に落ちてしまった。
それからどれだけの時間眠り続けていたのか……。アイシャは、鼻腔をくすぐる、スープの匂いに腹の虫を刺激され、目を覚ました。
「あら、起こしてしまったかしら。ごめんなさい。けれど丁度良かったわ」
そこには、何時もと変わらぬ優しげな表情のクローディアがいた。アイシャはハッとして自分の体を確認した。あのままホークは自分をあの状態にしたまま何処かへ行ってしまったのではと、咄嗟に思い出したのだ。しかしきちんと服を着せられていた。
アイシャはホッとしたが、すぐに怒りと悲しみがこみ上げてきて、また涙が出た。勿論、ホークに対しての怒りだった。
「どうしたの?よっぽどお城で怖い目に遭ったのかしら」
クローディアは心配そうにアイシャの頭を撫でてくれた。でも今は城の事などもう忘れてしまった。ホークの『おかげ』で。アイシャは涙を拭く。しかしこんなに哀しいのに、スープの匂いに反応し、お腹が鳴るのだ。
「おなかが空いたのでしょう?半日何も口にしていないんですものね」
クローディアが、持ってきたスープやパンの入ったトレイをベッドに置いた。
「ありがとう……クローディアさん。わざわざ水晶亭から?」
アイシャが礼を言うと、
「私というよりもホークが、あなたが腹を空かせてるだろうからって。そこまで運んできてくれたのも彼よ」
そう言うと、クローディアは上着を脱いだ。
「今日は私もこの部屋で休むわね。もう、月も天辺を過ぎているのだし」
クローディアはあくびをしながら隣のベッドに入る。
「あの……あたしのせいで?」
「そんなことはないわ。とにかく食べたら、ぐっすりおやすみなさい」
気にしているアイシャを気遣うように、クローディアは微笑むと、さっさとベッドへと横になった。
アイシャはゆっくり食事を口に運ぶ。ふと気づくとまだ、あの部分が痛かった。ヒリヒリするような、鈍痛もあるよあな、何かがまだ挟まっているような違和感。
けれど、益々アイシャには、ホークが一体何を考えあんな事をしたのか解らなかった。怒っていたといっても一体何に?それでもホークは、自分の事を見捨てた訳でも嫌いになってあんな事をしたのではないのをこの服と、食事が証明しているように思えた。しかし、
(あんなことをしといて、こんなご機嫌取りじゃ許さないから)
と、くすぶる思いをたぎらせつつ、スープを口元に運ぶアイシャだった。非道いことをされたというのに、なぜだか今は恐怖よりも怒りのほうが強かった。
ホークはというと。
怒りと嫉妬に任せて彼女を本格的に陵辱してしまったことに対して激しい自己嫌悪に苛まれることになった。
彼女の中にスペルマを吐き出すと頭のほうはみるみる冷静さを取り戻して、それにつけ自分がどんな非道いことをしたのかむざむざと見せつけられてしまう。
服を整えているとアイシャが気絶しているのがわかったので驚き、近寄ってみると、秘部から流れ出た白濁したものに赤いものが混じっているのが見て取れた。
破瓜は昨日済ませている。
これは紛れも無く自分の付けた傷の残滓だった。
「……くそッ……」
ただただ無性に腹が立った。自分の愚かさに。
Last updated 2015/5/1