Sweet Child O' Mine.
Romancing SaGa -Minstrel song.-
09. スタンド・バイ・ミー
朝食も終わり旅支度を整え、ついに俺たちはガレサステップを目指し出発することになった。
「昨晩も言ったが、此処から先ステップに入ったら一度ニューロードが途切れる。ということは街道の宿場もないから一度は野営をすることになるが、そのつもりで覚悟しといてくれ。モンスターの数もどっと増える。疲れたらこまめに休憩するからちゃんと言えよ」
俺は赤毛に釘を刺す。赤毛はこくんと一度頷いて返事をした。その顔からはひしひしと緊張感が漂う。よしよしいい顔だと俺は思った。
いざ出発し、案の定ガレサステップが近づく頃には今までとは比べようもないほどの数のモンスターが襲いかかって来る。俺たちは時折苦戦しながらもステップを進んでいった。そんな中、アイシャは必死に自分から戦闘に加わり、手助けは必要であっても一生懸命に敵と対峙し、戦いに挑んでいる姿が印象的であった。なんだか昨日までのこいつと違うなとふと感じるほどに、強い意志がその目には孕んでいるようだった。
そしてその日は日も暮れ始めたので、一度休憩することになった。火を焚き、交代で寝起きし番をする。その前に飯だ。俺たちは火を囲み買い込んだ食料を大事に食べることにした。
「なあ、アイシャ」
俺は疲れ果てて足をさすっている赤毛にふと尋ねた。
「なあに?ホークさん」
こちらに顔を向けると、相変わらずのとびきりの笑顔を浮かべる。揺らぐ炎の傍にいるせいか、グラス・グリーンの目がひときわ印象的に見えた。いつも赤い髪も、炎のせいで更に燃えるように赤く映えている。
「今日のお前、なんだか必死だったな。なんかあったのか?」
俺は今日の戦いぶりに対する疑問を投げかけていた。
「私ね、もっと、早く強くなりたいの。だからもっとまじめに戦いを覚えたいの」
「ほお。なんでまたそんなに強くなりてえんだ?」
何気なく問いかけると、「えっと……うんとね……」と赤毛は少しだけ恥ずかしそうな顔をして話すのを躊躇っていたが、やがてポツリ……と話してくれた。
「強くなれば一人でもどこでも行けるようになれるでしょ?そして、また縁があったらホークさんたちと一緒に旅をしたい……なって思って……。守ってもらうんじゃなくて、ちゃんと役に立ちたいし」
そんな予想外の答えに俺は、相棒と一瞬顔を見合わせ、
「……物好きなやつだな」
と俺は苦笑した。
「だがそんなこと、お前のじいさまが許してくれないだろ」
「おじいちゃんは私がどこかに行くのはそんなに叱らないの。というか、もうあきらめちゃったみたい。でもこんなに遠くに行って何日も帰らないのは初めてだから、今回はさすがに怒っちゃうかもしれないな……もしかしたら、暫く外に出るの許してくれないかも……」
しょんぼりと落ち込んだように項垂れる赤毛。そして
「早く、おとなになりたいな……。そしたらもっと自由にどこにでも行けるのにな」
と、独り事のように呟いていた。
大人になったらなったで、子供の頃に帰りたいと思うこともあるが、そういえば俺もガキの頃は早く大人になりたいと思っていたっけ。大人になりゃあなんでも出来ると思っていた。
「……人間てのはそう一足飛びに大人になりゃしねえ。例えば、今いきなり体が大人になったとしてもだ、頭ン中がガキのままならそいつはただのガキだ。でかくなって歳取りゃなんでも勝手にできるなんてことはひとつもねえ。だからよ、お前は今できることを精一杯やれ。学べることは学べ。そいつが結局年をとった時、大切になって残るんだからよ。今は早く大人になりてえと思ってるかもしれねえが、あとで振り返ってみて『あん時こうしてりゃあ今頃は』なんて後悔しねえようにな。そっちのほうが何倍もキツイんだぜ」
俺は少し説教臭えかと思いもしたが、早く大人になりたいと焦る少女に、どうしても言ってやりたくなってしまった。
「くれぐれも、早く大人になりたいからって大人の真似事に手を出すなよ。大人になってやることをガキがしたって何の意味もねえんだ」
それらはすべて、過去の自分に言いたいことだったのかもしれない。自分は自分なりにその時その時を懸命に生き延びてきたが、やはり多少の後悔が無いわけではなかった。
赤毛はそんな俺の説教話を真剣な顔で聞いてくれていた。時折うんうんと頷きながら、相変わらずキラキラした目で俺を見やがる。
「分かった!あたし頑張る!!ありがとうホークさん!」
実に素直な返事だった。そして
「ホークさんは、子供の頃に返りたいって思ったことある?」
などと尋ねてきた。俺は少し考えたが
「別にねえな。まあ小せえことなら後悔はあるにはあるが、過ごしてきた時間が無駄になるのもそれはそれで嫌だしな」
「そっかー」
赤毛は何故か妙に納得したような顔をして俺を見つめている。
「あたしも大人になったらそういう風に言えればいいなあー」
膝を抱えた姿勢で頭をその膝に預け、炎を見つめながらそんなことをつぶやく少女。あんな説教の後だからきっと良い風に解釈したんだろうが。
―違う。俺はな、戻るには辛いことや苦しいことが多すぎて、懲り懲りなだけなのさ。
無論過ぎてしまえば良い思い出とか経験として加味される出来事ばかりだが、二度と経験したくないことのほうが多いんだ。
だがあえてそれは言わないようにした。
そして俺たちはそれから交替で寝ることにした。最初は俺が番をし、次にゲラ、そしてアイシャの順番だった。そして翌朝を迎えた。
目算ではアイシャの故郷の村まではあと数時間というところだ。今日でこの娘とはお別れである。
―しかし奇妙なことには。これで報酬をもらえるとか、ガキのお守りから開放されるという感情を軽く凌駕し、正体不明の何かが心をざわつかせていた。それは一体何なのだろうか。俺は自分では理解できない感情に少しだけ戸惑っていた。
昨晩アイシャは、できるならもっと俺たちと旅がしたいと言っていた。実のところその時、もしこいつの家族がそれを許すならそれも悪かねえなどと少しだけ思った自分もいた。しかし俺自身この当て所のない旅をいつまで続けるのかもわからない。そもそも海賊くずれの俺などと、こういう緊急事態以外に旅を許す保護者などいようはずもない。
そもそもそんなことを考え始めている自分にも苛立ちが募る。
莫迦か、俺は。さっさとこんなガキと別れて早く元の気楽な相棒との旅に戻るのが一番だろうが。
この数日どれだけこいつに振り回されてきたっていうんだ。
本来必要もねえ散財をさせられ、買い物にうんざりさせられ、さんざん涎は垂らされ、大嫌いな果物は食べさせられ、挙句の果てには勝手に父親代わりに据え置かれ寝るときにまで甘えられたりしたんだ。
冗談じゃねえぞ。二度と御免だ。まっぴらだ。
―そもそも赤毛と俺たちでは棲む世界が違いすぎる。俺などとこれ以上関わるのは、アイシャにとって何のメリットにもならないだろうよ。
「ねぇホークさーん」
「……何だっ?!」
ふと赤毛に話しかけられ、俺はつい苛立って声を荒らげてしまった。アイシャはその声にとても驚いたらしく、びくりと震えて無言になってしまった。
「……すまん、何だ?」
俺はそんな自分にも驚き、少女を驚かせたことを謝った。
「……あの、あの旗のあるところが、私の、村なの……」
「あ、ああ」
アイシャは怒鳴られたことに訳が分からず、少し怯えているようだった。
彼女が示した場所、確かに何かの入り口を示すような二本の柱の上、少し目立つ旗が風になびいていた。
「良かったな。これで無事到着だ」
「……うん」
赤毛はコクリと小さく頷く。彼女は少し無理して笑っていたと思う。目元に寂しげな表情を隠さず、口元だけ懸命に上げているのがわかるからだ。
程なくして俺たちはその村に足を踏み入れた。
「ザアタル、ウアソカアキス!」
アイシャはタラールの言葉と思しき言語で何やら発している。見たところ辺りに誰もいないのだが、誰かに呼びかけているのだろうか。
「何だ、えらく寂しい村だな……」
「そうですね……」
俺とゲラは思わずそうこぼした。何より、アイシャの陽気なイメージと、このひどくひっそりとした村とまるでイメージが結びつかないことに違和感を感じ始めていた。そして赤毛の方もだんだんと顔が険しくなり、相変わらずタラール語で叫びながらどこかへ走って行ってしまった。
俺たちも村を歩きまわってみる。だが本当に誰も居ない。
店があったと思われるテントにも、品物は整然と置かれたまま店員らしき村人の姿はなく。
馬を乗りこなす遊牧民だと聞いていたが、アイシャが話してくれていた馬たちも一頭だっていなかった。
「こりゃどうなってんだ?」
幾らかの時間を歩きまわっているうち、はるか前方にアイシャが佇んでいる後ろ姿が見えた。近寄ると呆然とした顔。固まってしまっているようだった。
「アイシャ、これは……一体?」
俺が話しかけると、アイシャは糸が切れたかのようにその場に崩れ落ちる。俺は咄嗟に手を出し支えようとしたが一瞬遅く、彼女は地面へへたり込んでしまった。そして
「イニヨホリ サアト コエリ……コエリ……」
と、タラール後で取り乱した声を上げた。
「アイシャ、落ち着け」
俺も地面に膝をつき、アイシャの肩にそっと手を添えてやる。そうしていると、アイシャは少し落ち着いたのか、普段の言葉でつぶやいた。
「誰も、いないの……。みんな、どこかに、行っちゃったの……。どうして……」
赤毛はそう発したかと思うと、堰を切ったようにその瞳から涙が溢れ出してきた。さらに
「あの……悪夢が……現実になる……なんて……」
そう呟きながら、絶望したようなか細い声で静かに泣き始めたのだった。
その姿と言葉を聞き、俺はクリスタルシティの宿での夜のことが脳裏をよぎった。
眠りながら泣きじゃくるほどの恐ろしい夢に、これからもうなされる羽目になったというわけか。
そしてふと、俺に必死にしがみついてきたアイシャの姿と感触を鮮明に思い出してしまった。
「立てよ、アイシャ」
その場でしくしくと泣き崩れるアイシャに、俺はそっと徐ろに手を差し伸べた。
「俺が、お前と一緒に探して見つけ出してやるからよ」
―今思えば。この時俺は何故そんなことを口走ったのか、どうやってもわからないのだ。安い同情とか、その場の勢いとかそんなたぐいのものでは決してない。その時胸に去来したのは強い確信に似た感覚だった。そして特別な力によって口を動かされたようにも思う。
そうでも思わなければ説明がつかないというほど、そのぐらい自分でも意外な言葉だったのだ。
「……ほん、とう……?」
アイシャは俺を涙で濡れた瞳で見上げた。悲しみと困惑と、絶望に彩られた大きな瞳の中にしっかりと俺の姿が焼き付けられる。
この瞳の前で嘘など吐ける人間がいるのだろうか。
「ああ、約束してやる。だからアイシャ、立つんだ」
アイシャは俺の目から自分の視線を決して外さず、おずおずと震える手を俺の差し伸べた手に重ね、強く握った。その瞬間俺も彼女の手を握り返し、引き上げようとした。
すると不意にアイシャが、俺の首に抱きついて来たのだ。
「ありが……とう……ホークさん……!」
耳元を撫で付ける少女の涙声、そして熱気。
「ん」
俺は落ち着かせるように、抱きついてきた彼女の背中をポンポンと叩く。
「いいの……?本当に、いいの……?」
消え入りそうな声で再度確かめるように尋ねてくるので、
「まあ、乗りかかった船ってやつだ。ただし……」
ただし、と聞いてアイシャが俺の首から顔を離し、俺の顔をじっと見た。
「……成果報酬はうんと弾んで貰うからな?」
俺はにやりと口端を上げた。アイシャは少しほうけた顔をしていたが
「……うんっ」
俺の言葉を理解したのか、笑顔になり、元気に返事をするとそのまま俺から離れて立ち上がったのだった。
「……よろしくねっ、ホークさんっ」
「おう」
多少の無理はしていたのだろうと思う。だがそれでもとびきりの笑顔で俺にあいさつをする彼女を見て、漠然と思ったものだ。
こいつは何があっても守らなくちゃならねえと。
夕陽が遥か西の黒海へと鳴りを潜めようとしていた。
あれから俺たちは少しでも姿を消した村人が向かった先のヒントになるようなものがないかを探していた。彼女と彼女の祖父が暮らしていた家の中なども何かと探していたがやはりこれといって手がかりは見つからず、気付けば夕刻を迎えていたのだ。
「このまま戻るにしても野営になっちまうな。今夜はここに泊まらせてもらっていいか」
「そうだね。……どうせ誰もいないし遠慮しないでね」
「それではお言葉に甘えまして」
それにしても、見れば見るほどに奇妙だった。まるでつい先日まで村人たちが生活をしていて、突然すぐに村を出なければならな理由があったように、日用品などもほぼそのまなのだ。かといってどこかに攫われたなどというののは人数からして考えにくい。争ったような形跡もゼロということ。まさに『消失した』状態だった。
「みんなでどっかに行くってんなら、書き置き位残しゃあいいのになあ」
ふとそんなことを洩らすと
「それもできない理由があったのかなあ。あたしには見当もつかないけど……」
言いながら、アイシャは何やらごそごそと探している。
「あーあった。よかったー!」
「何がだ?」
「傷んでない食糧!勿体ないから食べよっ」
「おう、そうだな」
そうして赤毛が出してきた野菜やら乾燥肉のストックを調理し始める。彼女がやるというので黙って見ていたが、その手際は正直よくなかった。と言うより悪い。無茶苦茶悪い。
「……お前よぉ。普段から全然してないだろう、そういうこと」
「やってないってことは無いよっ!……でもほんとは苦手なの……。一人で全部やったことないし」
「よくそれで自分で全部やるなんて言ったな?」
「……………………」
怒ったのか言い返せないだけなのか分からないが、赤毛は黙ってしまった。黙りながら不器用極まりない手際で野菜の皮を剥く。アルツールでは果物の皮はそれなりに剥いてたのになんで野菜のは切れねえんだ。よくわからんやつだ。
「包丁の角度はもうちょいこうだろ」
痺れを切らした俺は、アイシャの背後から両手を取って正しい切り方の補佐をしてやる。大きな手に突如包まれたアイシャは一瞬体を震わせたが、斜め上の俺の顔を見つめると
「えっ、……ホークさん、できるの?」
と、意外そうな声を上げた。
「ったりめえだ。船の上で何日も航海する時は自炊が基本なんだぞ。船乗りならある程度できなきゃあ生きていけねえ」
「じゃあ、ゲラちゃんもできるの?」
「あいつは俺よりうめえぞ。操舵させてなかったらコック長にしてえぐらいだ」
「いえいえ、そんなことはありませんよ」
ゲラ=ハは突然褒められて照れているのか謙遜していたが、実際あいつは何をやらせても巧いのは確かだった。しかしその裏では惜しみない努力があることを知っている。
「たくさん練習したの?」
「そうですね。人間の食べ物自体が触るのが初めての時は戸惑いましたが、慣れてしまえばどうということはありません」
「ふーん……やっぱり練習が大切なんだね」
「そういうことだ。よしできたな」
アイシャの手から自分の手を離すと現れたのは半分がボコボコで半分が綺麗に剥かれたジャガイモ。
「すごーい!」
「凄かねえよ、ホレ次だ」
アイシャに次の芋を渡し剥かせる。やはりまだ断然不器用だが、さっきよりは良くなったような気がする。
「すぐにはできなくていいんだぜ、昨日も言ったが、すぐにできるようになることなんて少ねえんだよ。ぼちぼち頑張んな」
そうしてまたアイシャの手つきを見守る。ひどくなるとまた手助けしてやる。そんなことの繰り返しで、ずいぶん時間がかかって食事にありついたのだった。
そして夜も更けたのだが、アイシャは旅と慣れない食事作りで疲れたのか、はたまた久しぶりの我が家に気持ちが油断したのか、片付けが終わるとさっさと寝てしまった。
「おいおい家主がさっさと寝るのかよ。仕方ねえな」
決して広くはないテントの中で、相棒と赤毛と俺の三人で雑魚寝だ。だがなぜかこないだのクリスタルシティの豪華な宿よりもよほど居心地は良かった。
「静かだな……」
俺たち以外には人っ子一人居ない村の夜と言うのは、ひどく静かだった。
風も無いので草の靡く音すらしない。音がするとすれば、俺たちがわずかに動くときの衣擦れの音と、赤毛の寝息を立てる音だけだ。
「きっとかつては、この時間でも人の話し声や生活の音で活気に満ち溢れているのでしょうね」
相棒はしばし、この村のあるべき姿に思いを馳せているようだった。
「取り戻してやれるものならもそうしてあげたいですね」
「……ああ」
寝言一つ言わず寝息を立てる赤毛の後ろ姿を見つめ、俺と相棒は様々な考えを巡らせていた。
「……なぁ、ゲラ」
「何でしょう、キャプテン」
俺は先程からずっと言おうか言うまいか考えていた言葉をやっと発した。
「済まねえな、勝手にこんなこと決めちまってよ」
「アイシャさんのことですか」
「ああ。……早くに解決できればいいが、場合によっちゃかなり長い旅になっちまうかも知れねえ。だから、お前に了解を取らなかったことは済まないと思ってる」
相棒は珍しく無言になり少しうつむき加減で、何かを考えているようだった。
「お前は俺がパイレーツコーストを追われた後もずっと俺に付き合ってくれたのは感謝してる。最初はどういう旅になるかなんて考えてもいなかったが、これがメインになる以上は、もはやお前とは関係のない旅になるかも知れねえ。だからもし、お前が他にやりたいことや目的を見つけたら、いつでも抜けて構わねえからな」
俺がそう言い終えると相棒は顔を上げた。すると
「キャプテン、私はあなたにとって船を降りた程度で解消されてしまうような参謀でしたか」
ただでさえゲッコ族にしては低い声のゲラの声のトーンが、凄みを増すように一段と低く響いた。
「決してそんなことは思ってねえ」
「では二度とそのようなことを仰らないでください。第一、キャプテンが何か決定する時に私の了解など取ったことがありますか。それでもこの十年キャプテンに付いて来たのは、キャプテンの判断が何時も正しかったからです」
彼に珍しく強い口調できっぱりとそう言われて俺は、もう何も言えなくなってしまった。
「……すまんな。ありがとうよ」
せめてもの感謝の言葉が自然と口から溢れる。
「いえ。それに、ワロン島近辺ばかりではなく世界に目や足を向けるのは色々と勉強になりますし、私もアイシャさんには恩義を感じていますので、できるならなんとかしてあげたいのです」
「恩義、だと?」
意外な言葉に俺は少し驚いて聞き返す。だが
「まぁ色々と、です」
と、相棒は珍しく曖昧な言葉で茶を濁していた。
Last updated 2015/5/23