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碧い月の下で…。
FINAL FANTASY Ⅸ

08. ビビの故郷(ふるさと)へ

 船が地面を離れ、城を少し離れたところで、ダガーはデッキに出るや否や、

「ああ!何だか久しぶりに開放された気分!!」

 と、大きな伸びをしていた。本当に、嬉しそうな様子だった。

「エーコ、付き合わせてしまってごめんなさいね。ベアトリクスもスタイナーも、ジタンと二人だけでは心配だからって、リンドブルムの国を通すことであなたも付き合わせたかったみたい。でも、私、エーコと一緒にマダイン・サリに行くのをとても楽しみにしていたのよ」

 ダガーはエーコに謝っていた。そして

「ジタンも、許してね」

 ジタンにも顔を向け、すまなそうに苦笑いをしていた。

「ちっとも構わないさ!そりゃ、二人っきりがいいけど、エーコにとっても、久しぶりの故郷だもんな」

 と、ジタンは笑っていた。

「そーだよ、エーコだって、一緒に帰るのをとーーっても楽しみにしてたんだからぁ!!それに安心してね。エーコ、ふたりの邪魔になんないようにするからさ」

「もう……エーコったら」

 などと言い、三人は心から笑い合った。とても懐かしい空気を感じる。あの旅の時に似た空気だ。辛い旅でも遭ったけど、楽しいこともたくさんあったあの旅の空気に触れられて、三人はなんとも言えぬ、しかし同じ気持ちを共有していたのだった。

 すると次の瞬間、ダガーは一瞬ハッと息を呑むような顔をした。

「見て……なんて綺麗なのかしら」

 ダガーは思わず朝の空の景色の美しさに目を奪われていた。その時、ジタンはそのあとエーコが一瞬どことなく寂しそうな顔をしたのが心に引っかかっていた。しかし、その時は気のせいかなとも思ったのだった。

「さてまずは……マダイン・サリに行く前に、マグダレンの森に行くがいいかい?」

 ジタンが計画を話すと、ダガーは一瞬厳しい顔をして、

「……ビビのところね。ちょっと辛いけれど、行かなくてはね」

 と、何か自分の中で思い出したように、何度か頷いて、こう答えた。

「…………」

 エーコはただ、黙っていたが、やはり少し辛い面持ちなのが見て取れた。しかし

「忘れてないって事、ちゃんと、教えてあげなきゃね。元気だよって、挨拶しに行かなきゃ!」

 と、気丈な笑顔で答えた。

「そうだよ、エーコ。オレたちが忘れない限り、ビビは本当に死んだことになんてならないんだ。悲しむよりも、”お前も元気か”って、挨拶しに行こう」

 

 

 そうして、その日の昼には、黒魔導師たちとジェノムたちの住む、マグダレンの森にやってきたのだった。勿論、森の中にはとても中型艇と言えど、着陸は難しい。なので、森の手前、海岸に近い地点でプリンセス・エーコ号を停泊させておいてもらった。

「明日の朝には戻るから、ちゃんとあたしの船、守っててねっっ!」

エーコはエリンたち、クルーに念を押していた。

「わかっていますよ、お任せくださいエーコ様、行ってらっしゃいませ。ガーネット様、ジタンさんもお気をつけて」

 そう言いながらクルーたちは一斉に敬礼をし、見送ってくれた。「ああ、頼むぜ」ジタンも手を振って、それに答えていた。

「解っていると思うけど、ここからは少し距離があるぜ。足元にも気をつけて……」

 ジタンがダガーの手を引こうとすると、「あたしは?」と、エーコが飛び跳ねて手を差し出してきた。

「はいはい、お姫様がふたりもいちゃあ、大変だ」

 と、エーコのふくれっつらに、ジタンは苦笑いしていた。

「私はいいわ。旅で何度も通った道だから慣れているわ。そんなに気を使わなくていいのよ。ジタン」

 ダガーはその言葉のとおり、さっさと森を歩いていった。

「今はどんな場所も、懐かしいわ……」

 森の木々に手を触れながら、全く迷うことなく村の方角を目指すダガーがいた。確かに旅で何度も通った森なのだが、

「すごいな、散々迷った初めの頃がうそみたいだ。しかも、二年も経ってるのにな」

 ジタンは、その感覚に感心していた。

「気持ちの悪い『ヘクトアイズ』や『モルボル』なんてもう出ないわよね??」

 エーコは、少し恐々として、ジタンのベルトを引っ張りながら歩いていた。

「そうだな、出たとしても、ダガーの召喚魔法で一撃だろ?」

 ジタンは冗談めかしてそんなことをエーコにそっと言っていた。

「あら……、ジタンは守ってくださらないの」

 彼女は少しムッとし多様な顔をしてやり返す。

「じょ、冗談だよ!出るわけがないし」

 ジタンは聞こえてたとは思わず、あわてて、その言葉を訂正していた。

「でもたまには召喚魔法も使わないと腕が鈍るわね。彼らはこのガイアを守る貴重な存在なのだから、時々は挨拶しておかなければね?……うふふ」

「そうよね。アタシも最近呼び出してないから、彼らがへそを曲げてないか心配なのっ。くふふ」

 二人はいたずらっぽくジタンを見た。

「ちょっ……、二人とも、まさかオレに召喚獣を使おうなんて考えてないよな……?」

 一瞬真っ青になったジタンを見て、二人はクスクスと笑うだけだった。

「冗談に決まっているでしょう。もしモンスターが出てきたらの話よ。ふふ」

 ダガーは明るく笑いながら、ジタンの前をすたすたと歩いて行った。

 ジタンはホッと胸を撫で下ろした。同時に、こんなに明るいダガーを見たのも久しぶりであり、その嬉しさもこみ上げて来たりもした。

 

 数時間も歩くとやがて、村に続く秘密の入り口が見えてきた。相変わらす今も魔法のまやかしがかかっていたが、道を熟知している彼らはすんなりと村に到着できたのだった。その頃にはもう昼下がり、というよりもう夕方に近かった。村の入り口には見慣れた姿の一人の黒魔導士が立っており、彼はジタンの姿を見ると驚いてあたらから声をかけてきた。

「あ……、ジタンさんじゃないか。今日は一体どうしたの!?」

「よう。久しぶりだな。ちょっとビビのお墓にでもあいさつしようと思ってな。仲間も連れてきたんだ」

「そうなんだね。歓迎するよ、みんな喜ぶと思うな。エーコやダガーは初めてだモンね」

 入り口でジタンに声をかけてきたのは、ビビそっくりの、「ビビのこども」のベベだった。

「や、やっぱりビビそっくりだから、どきっとしちゃうわね」

 エーコが、複雑な顔つきで、そのビビの複製である「こども」の姿を見つめていた。

「折角だから、ゆっくりしていきなよ。宿の子にはボクが言ってあげるから」

「ああ、そのつもりだしな。安くしてくれよ」

「何言ってんの、君達からギルなんていただけないよ。じゃあ、あとでね」

 そう言うと、彼は、分かれ道の右のほうへと消えた」

「……本当に、ビビがいるみたい。なんだか……確かに態度やしぐさはビビとは違うんだけど」

 ダガーが洩らす。墓参りをしに来たというのに、その本人そっくりな者と話すというのは実に奇妙な体験だった。

「彼らは、単なるクローンよ。記憶も遺伝しているけれど、それはビビの思いを伝えるための断片的なもの……。たいした容量ではないわ」

 後ろの武器屋の物陰から、少女が唐突に話しかけてきた。それはジェノムの少女、ミコトだった。

「いきなり喋りかけんなよ。びっくりするじゃねぇか」

「あら、別に脅かすつもりなんてないわ。……お墓はこっち。付いてきて」

 抑揚のない声でそう言うとミコトは、さっさと村のはずれにある、「墓地」へと歩いていった。

「全く、相変わらず愛想のない妹で」

 ジタンは両腕を軽く上へ放るようなポーズをして苦笑いをし、ミコトの後を追うように、墓地へと歩いていった。ダガーもエーコも、顔を見合わせていたがやがて黙って、ミコトとジタンが歩いていった道へ向かったのだった。足取りは重く、たいした距離ではないのに、たくさんのビビとの思い出がその間怒涛のように頭を駆け巡る。それは三人が三人共同じ思いだった。だからなのかなぜか長い時間歩いているような感覚に襲われる。

 ビビはこの村に出会い、帰ることが出来たのだ。どんなに短い命だったとしても、彼は今、多分幸せなのだと思った。

 ダガーは、初めてこの村に来たときのビビの姿がいつまでも印象的だった。初めて自分と分かり合える仲間が存在したときの感激のしようを。そしてここにきてからのビビの変わりようを。どんなにみんな、さんなビビによって元気づけられただろう。彼の成長は、同時にジタンやダガーや、仲間全員の成長だった。ビビの思い出が生涯この胸から消えることはないだろう。彼との出会いは、記憶の大部分を占める大切な宝なのだから……。

「この墓地……。……なんだか……」

 ダガーは、以前見た、ここの墓地の記憶と大幅に景色が違っている事に戸惑い、絶句した。

「お墓が……増えているわ。こんなに、たくさん……!」

 それ以上は何も言葉にできず、絶句を禁じえなかった。エーコもその光景にショックを受けたのか、思わず後ろを向き、顔を背けていた。

 クジャの創った黒魔導師たちの寿命は、一年から一年半。あれから二年近く経つのだから、考えれば、解ることだった。

「最初にこの村を作った黒魔導師たちは、すべて止まって……しまったんだ。オレがこの村に助けられて行ったときにはもうすでに、ほとんどの彼らは止まってしまっていた」

 ジタンは一歩前に進み出ると、ひときわ大きく、たくさんの飾りがついた十字架の墓標の前に膝を落とした。

「ビビ、久しぶりだな。あっちで仲間と楽しくやってるか?」

 ダガーとエーコは、その姿に黙って従い、その場で膝を落とすと祈りを捧げたのだった。長い沈黙のあと、

「ビビ、最後くらい、一緒にいてあげたかった……」

 と、ダガーはひとすじ、涙を頬に伝わせて墓に語りかけていた。「……もちろんこれは、わたくしの勝手なのだけど……」

「確かにね。みんなにこれだけ想われて、ビビは幸せだったし、短い命だったからといって、不幸なんかでは絶対になかったと思うよ」

 後ろにいた、ビビの子供……クローンの一人が言った。

「ビビは好きなように、思うとおりに生きて、まっとうできたんだ。でも、それは簡単なことじゃないって、ビビは言っていた。ジタンやダガー、みんなみんな、自分の信念と抱く理想に従って、生きて、あの絶望さえも砕いて……。強く、人らしく生きたって、ビビはそんな君達に出会って、信念が何かを教えてもらって、とても幸せだったと言ってたよ。……でもさ、ジタン。ひとつだけビビは教えてくれなかったことがあるって言ってた」

 そのとき、一陣の風が辺りにそよいだ。

「孤独でどうしても寂しくなったとき、一体どうしたらいいのか、わからなかったんだって。ジタンは、それを多分知っていると思っているんだけど……教えてくれないかな」

 しばらくの間また沈黙が続いた。ジタンは振り向かずに、じっとビビの墓標に向かって小さな声で囁き何かを語りかけていた。その答えは、ダガーやエーコも、とても聞きたいと思っていた。だから、そんなジタンに、固唾を呑んで眼差しを向けていたの だが……

「答えは、ビビに直接言っておいたよ。これでいいだろ?」

 と言った。そして彼は立ち上がると、

「テラのやつらにもにも挨拶すっか。うざいけどな」

 と、スタスタと村のほうに戻っていったのだった。

「あ、ジタン!?ちょっ……」

 ダガーは、驚いてジタンの後姿を見たが、もう少しこの場に居たいと思って、追うのはやめた。それは、エーコも同じであったらしく、ビビの墓の十字の墓標の天辺になびく、見慣れたとんがり帽子を見つめていた。帽子は、なぜかビビがよくやっていた「帽子を深く被り直すポーズ」を思わせる靡きを見せて、まるで彼が

「ジタン、わかったよ」

 と語りかけているようだった。すると、エーコは小さな声で呟いていた。

「……ずるいよ、アンタだけそんなこと、教えてもらっちゃってさ……」

 

 

 やがて、陽は徐々に傾いて、月が見えるようになってきた。ジタンたちは宿に腰を落ち着けると、道具屋の向かいにある大きなオルゴール・プレイヤーに耳を傾けていた。太古の昔の音楽らしい。一体何処で見つけてきたのか、不思議な事にこのプレーヤーに、オークションで見つけた魔道器と鏡を近づけると反応しこの音楽が鳴るので、ここに置いていったのだっけ。その旋律は、いつ聴いても心地よいものたった。テーブルのそばでその音色に聴き入っているダガーに、ジェノムの女の子が紅茶を運んでくれた。

「最近やっと、我々も音楽というものの素晴らしさが解ってきたのです。……なぜテラには無かったのかも。この紅茶はセイロンですよ。とても薫り高いのです。召し上がってみるといいですよ」

「あ……、あり……がとう」

 ダガーは、あのジェノムがこんな愛想をみせるなど思ってもいなかったので心底驚いていた。そんなダガーに

「そりゃあ、二年も経つんだ。彼らだって変わる。魔導師たちがただの人形から自我に目覚めたようにね」

 ジタンは二段ベッドの上段に横になりながら、ダガーに言った。

「変わったというより、生命が持つ本質なのかもね……。ジタンは知らないだろうけれど、あたしたちジェノムは一切余計な感情など持たないように、これら娯楽など何も与えられずに、テラの青い光に洗脳されながら、ガイアを憎むように教えられながら生きてきたの。いつかあの憎いガイアを取り込んだら、このような不自由と空虚さから逃れられるから……。と。でもそれは……、元の魂がジェノムに還ろうとしたときに、余計な自我が生まれていると体が拒絶してしまうから。今考えれば、私たちは魔導士たちと同じ、人形以下だったのかもしれない。人形ですら、持ち主に愛されるのだから……」

 ジタンの傍らにミコトが座って、ぼんやりと二つの月を眺めているのをまじまじと見つめてしまった。こうして見ると、やっぱ彼女はりジタンとそっくりだ。美しいプラチナの髪の色、不思議な蒼の光を放つの瞳の色、長く金色の尻尾。考えてみたらこんな亜人種族はガイア上には絶対に存在しないことを、ダガーは実感していた。

「あの……元の、テラの人たちの魂は一体今頃どこにあるのかしら」

 ダガーは今の話を聞いていてふと思った疑問を口にした。

「管理者のガーランドが死んでテラが崩壊した時点で、クリスタルに還ったんだろうな」

「じゃあ、ジェノムのみんながああして人間らしい態度を見せるのは、魂が宿ったことと違うのかしら……?」

 ミコトは、溜息をつくと

「魂というのは即ち、その人が生きて蓄積した感情の記憶よ。どんな生き物も自分で動き、見、考え、何らかの感情を掛けられることによって記憶が、つまり『魂』が宿るの。一見立ち動かない植物や人形や武器や、言葉そのものだって立派に魂を持っている」

 ミコトは少し離れたところにあるオルゴールプレイヤーへと歩み寄ると、それにそっと手を触れた。

「きっと、この古い音楽もそう、とても古い時代に、たくさんの人の記憶に残った思い出が、今の時代に生きる私達が聞いてもとても懐かしく思えるの。これはデジャ・ビュとも言われるような記憶の残照現象ね。そしてそれらはすべてクリスタルに記録されて、再生するときに良いものはより良い意識、悪しきものはより悪しき意識となって地上に循環する。『霧』はまさに後者の産物よ。ジェノムは洗脳されて、魂のレベルを常に成長しないようにガーランドに操作されていたけれど、ここではもうそんな束縛もないから。意識のレベルが人並みになって彼らも生き生きとしてきたのね」

 ダガーは、そのミコトの話に随分と聞き入っている様子だった。

「全く、難しいことが好きだね、二人とも。意外と気が合うんじゃないか?……」

ジタンは、大きなあくびをしていた。向かいのベッドに目をやると、エーコはもう眠ってしまっていた

「ありゃ、エーコ……ちゃんと毛布かぶらねぇと風邪引くぜ……やっぱまだ子供なんだなぁ」

 などと言い、笑っていた。

「いいわ、私がかけてあげる。……ふふっ、よく眠っているわ」

 ダガーはすくっと立ち上がると、エーコの体に優しく毛布をかけ、しばらくその寝顔を見つめていた。

「私ももう休むわ。ああ、クジャが今日あたり帰ってくると思っていたのに。どこで何をしているのかしら。ジタン知らない?」

 そんなことをミコトは呟く。

「さー?知らないね。もしかしてどこかでくたばってんじゃないか?」

 ジタンは冗談めかし、そんなことを言い放った。

「……確かに、いつ彼だって『止まって』もおかしくはないものね。笑えない冗談だわ」

 ミコトはジタンの冗談とも本気ともつかないような言葉に気分を害したのか、吐き捨てるようにジタンに言い放つと、さっさと何処かへと消えていった。

「わかってるぜ。でもそれを承知で世界を飛び回ってるのはアイツ自身の考えなんだからな」

 上体を起こしベッドから乗り出して、ジタンはミコトの後姿に言った。聞こえたかどうかは別として。

「ジ、ジタン!?」

「うっ、うわ!?驚いた!」

 突然目のまん前にダガーの顔があった。

「クジャは……彼は今も生きているの!?」

 ダガーは信じられないといった面持ちで、こんなことを聞いてきたのだ。

「あ……、そのことか。まだみんなには言ってなかったな……そういえば。まぁ……確かにクジャの奴は生きてるよ?今もたぶんね」

 ジタンはこともなげにあっさりと白状した。

「どうして……。彼は、もうあの時すでに寿命だったのでは?」

 確かに。テラでガーランドを倒したとき、彼の止めを刺しにきたクジャに、ガーランドはまもなく彼の命の時間は止まると確かに言った。だからこそ彼は自暴自棄になり、クリスタルごと世界を滅ぼそうとしたのだった。

「確かにな。でも、オレが命がけで助けた命だよ、そう簡単にくたばられても拍子抜けするぜ。実際、クジャの寿命がなぜ延びているのかはオレもミコトもわからないのさ。けどあいつは依然ピンピンしてるしなぁ。ガーランドが設計ミスしたんじゃないかな?」

 事も無げにジタンは言うが、彼がまた暴走しないとも限らないのではないかと、ダガーは少し不安になる。しかし、そんなダガーの不安を見透かしたように、ジタンは発した。

「そういやあいつ俺が助けたら何かキャラ変わったなぁ。あの黒魔導師たちの墓を作るのも積極的に手伝ったりしてたっけ。止まってしまった彼らを一人一人丁寧に葬っていたよ」

「えっ……!?」

 ダガーは耳を疑った。まさかあのクジャが、と。しかしそういえばジタンがそんなことを知っているのか、不思議になってきた。

「……一体あなたとクジャは、あのあとどうして生き延びたの?」」

 いつの間にかダガーは、ジタンのベッドの上に居座って、座り込んで、ジタンをまるで押し倒すような恰好で迫って問い詰めていた。ダーガは気がついていないようだったが、ジタンはそんな姿勢に少し興奮しそうになったが、なんとか落ち着かせようと咳払いをした。

「あっ……と、そ、そうだなぁ……。おほんっ……。話すとすごーーーく、長くなるけど………」

「構わないわ。そのための『デート』でしょう?」

 ダガーの方は、真剣そのものだった。

 

 

 

 

Last updated 2015/5/1

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