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はつよる。
Romancing SaGa 3

Full Moon. 03

 「ふぅっ……、んっ……は……っ……あぁぁ……!」

あまりの気持ちよさに、最初は押し殺していた声も吐息交じりの喘ぎが漏れる。その声がさらに気持ちを高めていった。

「ミカエル……様ぁっ……!!」

 ほどなくして絶頂を迎えてしまった。これまでも、多くはないが何度かしたことのある行為。しかし大抵はその絶頂感のあとに強い罪悪感に押しつぶされそうになっていた。

 だが、今日は違う。罪悪感は感じるものの、今日はどうしても興奮と中心の疼きが冷めてくれず、一度の絶頂では足りなくなっていた。さらに、もっと、その先が欲しくてたまらなかった。

 カタリナはこの長い間己を縛っていた様々な呪縛から解放されたかのように、それだけはするまいと思っていた場所に手を伸ばそうとしていた。少し怖さもあったものの、今日ばかりはいつもの強い理性よりも欲望が軍配を上げた。心臓の鼓動を強く感じながら、まとっている長いすその寝間着から足を露出するほど足を広げてゆっくり、こわごわと下着の中に手を入れると最初に先ほど刺激していたつぼみをかすめて思わず快感に息を漏らしながらビクリと震えた。でも、今の目的はそこではなかった。もっと、もっとその奥……、とためらいがちに指を這わせた。

 

 「カタ……リナ……」

 

 確かに名前を呼ばれた。よく知った声だ。誰であっても嫌だが、世界一知られたくない相手の声にカタリナの心臓は凍りつきそうになった。顔を向けるとそこには思った通りの人物が立っていたのだ。

 

 

 

 ミカエルはあのあと、カタリナにあのようなことがあったのだから話すなら今夜が良いだろうと考えた。少し休んで精神的にも落ち着いているだろう。そう決断し、相変わらず山積された公務のうち必要最小限のものを終わらせてからようやくカタリナの部屋へと向かったのはもう夜もだいぶ更けた頃だった。この時間では彼女はもう休んでいるかもしれないがどうしたものかと考えていたが、行ってみて眠っていたならまた明日にでもと思いとにかく足を向けた。

 そしてカタリナの部屋の前へ来たミカエルだったが、万が一彼女が眠っていたとしたらドアをノックをすれば起こしてしまうかもしれないと思った。なのでドアの外から声だけで「カタリナ、起きているか」と声をかけてみたのだ。しかし、返事はない。やはりもう眠ってしまったかと軽く息を吐いた。そのとき何の気なしにドアの取っ手に手をかけてみた。するとなぜか鍵は開いていることに気づいた。

 (なんと不用心な……やはりカタリナらしくない……)

 その時ふと頭に浮かんだのは、今日初めて見たカタリナの寝顔だった。もう一度あの顔が見たいとなぜかミカエルは強く思ったのだ。具合もよくなさそうだったので様子を見て行くくらいはいいだろう……と、ドアをゆっくりと開け、室内へと足を踏み入れたのだった。

 すると、ベッドの傍の衝立の向こうから息も絶え絶えなようなカタリナの声が聞こえてきた。最初はまたうなされているのではと思ったが、少し聞いていると明らかに違うとわかった。苦しみうなされているというには、あまりにも甘く切ない吐息と喘ぎだった。ミカエルは一瞬血の気が引くような感覚を覚えた。もしや知らぬうちにそう言う仲の男性がほかに居り、カタリナが自室に引き入れているのかとも考えた。だが、冷静に考えるとその割にはカタリナの声しか聞こえないのだ。ミカエルの足は勝手に動いていた。気づかれないようそろり、そろりとベッドの方へ近づき、衝立の向こうを覗こうとした。その時、カタリナの甘い声が自分の名を発するのが聴こえた。その声を聴いたミカエルは全てを察し、そして心をギュッと掴まれるような感覚を覚えた。

 カタリナの名誉のためにもこのまま帰ったほうがいいと頭では分かっていたのだが、彼女に言いたいことがあったから来たのだ。そんな現場を見たからにはなおさらで、もう頭で冷静なことを考えるよりも体が勝手に動いていたのだ。

「ミ、ミカエ……、……!」

 カタリナもはや言葉にならない声をわなわなと戦慄く口から吐き出すと、気が遠くなりそうな意識の中で、枕元に常に忍ばせてあるマスカレイドを無意識のうちに手に取ったのだ。

 「カタリナ!」

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続きは「はつよる。」にて…。
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Last updated 2020/8/26

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