ご存知、クローディアを赤ん坊の頃に引き取り22年間彼女を育てた
迷いの森に住まう魔女、オウルについてです。
オウルとは実際何者なんでしょうか。
魔女の彼女は何故ひとりであの広大な森に住み、クローディアを育てたのでしょうか。
「迷いの森には恐ろしい魔女が住んでいるらしいわ。」
メルビルに住む女性のセリフです。
このことから、オウルの存在はまことしやかに知れ渡っており、
畏怖の対象として見られているようです。
クローディアを守ってほしいと願った侍女も、だからこそ願いを掛けたわけですから。
ではこの魔女はいつ何処で生まれ、この森に辿り着き魔女として知れ渡ったのでしょうか。
私はきっと、この魔女は人間ではなく、森の精霊のような存在ではないかと思いました。
迷いの森とはそもそも、森の神シリルが1000年前に作り上げたものだといいます。
シリルは森の木々と自然を愛するあまり、自分が創った森に何人たりとも入らないよう結界を施しました。
この森が侵入を拒む者は、永遠に迷い出られなくなるかいつの間にか入り口に戻ってしまうという結界です。
それを一部の人達は「呪い」と呼び、オウルの姿を見たことがなくても、
あの森にはきっと魔女がいて、呪いをかけているに違いないとまことしやかに広まったのでしょう。
一方オウルは実在しています。
オウルは何百年か生きた木の精霊が、人の形になり森を守護しているのではないかと考えます。
それもシリルの命を得てです。
シリルは、森に侵入してしまう人間にも善い者と悪い者がいて、たまたま迷い込んでしまったりした善い者は
なんとか入り口まで誘導する役割をオウルにさせたのだと思います。
いちいちそうした判断をシリル自身をするわけにもいきませんから。要は迷いの森の管理者です。
オウルは森全体のことがすぐにわかる能力を持っています。だからジャンが魔物に襲われた時すぐにわかったのです。
そしてジャンは善い人間だとすぐにわかったのでしょう。だからクローディアにジャンのところならと
会いに行くことを許可したのです。
言うなればジャンはオウルにとってお墨付きの人物だったわけです。
・クローディアを育てた理由。
さて、そんな森の守護者オウルがクローディアを育てた理由とは?
そもそもそれは、皇室の侍女の必死の訴えが発端でした。
その侍女は切羽詰まり追い詰められた挙句に、森の魔女でいいからこの皇女様をお守りくださいと念じました。
一方願いをかけられたオウル。
オウルは森で何の不満もなくそこに存在していましたが、そろそろ自分の寿命が迫っていることに気づきます。
森が作られて木の精霊として1000年生きてきたオウルは、
そろそろその精霊としての寿命を迎え、次の命に転生する時が迫っていると感じたのでしょう。
(デスの話しによれば、死んだ人間の魂は浄化されて一度精霊になるというとのこと。
そしてその後人間などに転生するということです。)
そこへ、自分に助けを求める人間の声が聞こえてきたのです。
この魔女として恐れられる自分に助けを求める人間がいるなんて。
それも、バファル帝国の皇女を守れなどという内容。
迷ったと思います。しかしここで何百年も森の管理者をしてきて、悪い人間も見たけど善い人間もたくさん見てきました。
最後の最後だけは、一度でいいから人間というものがどんなものなのか見極めてみたいと思ったのではないでしょうか。
シリルもエリスも驚いたかもしれません。それでも、長く森を守ってきた管理者の最後の願いだと受け入れたんだと思います。
そうです。人を拒むことが仕事の森の魔女が最後に人を受け入れたいという願いを持ったことに
二神の中に何か運命の鼓動を感じたのかもしれません。
(エリスのシンボルを取りに来た時のエリスのセリフによれば、
この森にクローディアが来た時から、こうなるのではと感じていたという話です。)
それでも、自分の寿命が少ないことを知っていたオウルは、いつ自分が居なくなってもひとりで生きていけるよう
クローディアをかなり厳しく強く育て上げたと思います。
人付き合いのない魔女に育てられたものですから人との接し方は教えられませんでしたが
森の美しさと神に見守られてきた彼女は自然や動物を心から愛する心のやさしい女性に育つことができました。
そして死の直前。
ジャンという男が森に迷い込んできた時から、そろそろ自分の役目を終えることを察知し
外の世界に少しでも馴染んで生きていけるように仕向けたのだと思います。
強く育てたから暗殺者に後れを取ることも無いはずだと。
そして程なくして、オウルの精霊としての生涯と森の守護者としての役目は終わったのでありました。
・「しゃべりすぎたわ……。」
これは死ぬ間際のオウルのセリフです。
私はこのセリフ、昔はしゃべりすぎたせいで力を使って死んでしまったのかと思っていたのですが、
最近では、なんとなくですが
クローディアには真実は一生話すまい、死んでも話すまいと思っていたのに
自分が死ぬ間際になるとやはり伝えなければならないという使命感が勝り、
それでも何も知らずに森で暮らして欲しかったという気持ちがあのセリフに要約された
いわば、オウルのクローディアに対する愛情の現れだったのかなと考えてしまいます。
本当のことは知らないほうが幸せなこともある。
だけど知らないままでいる不幸もある。
今のクローディアは、知らないほうが不幸なのかも知れないと悟ったのかもしれません。