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はつよる。
Romancing SaGa 3
Full Moon. 03
すっかりとしどろもどろになるエレンを見て、ハリードは少し体を離すと「冗談に決まってるだろ」と言い、軽く指の背でエレンの熱い頬を撫でた。
するとその手に、エレンの手が重なった。ハリードはそれに少しどきりとしたが、
「……本当に冗談なの?」
と、エレンは睨んできたのだ。少し怒っているように見えた。
「どうしてそんな冗談を言うの?」
問い詰めるエレンの身体が一歩踏み込んできた。
「いや……、それは……すま……」
さすがにマズったと思ったハリードが謝ろうとした途端、胸元に軽くドンと重みが乗った。エレンが抱きついてきたのだ。
「……別に、ハリードがそうしたいんだったら、それでも構わなかったんだけど……」
ハリードの胸元から聞こえてきた、くぐもって消え入りそうな声だったが、しっかりと聴こえたそんなことばが彼の胸を貫いた。
「……エレン……」
目の前に見える、エレンの頭をそっと撫でた。エレンはぴくりと震えて反応したが、恥ずかしいのか顔をなかなか見せてくれないので、肩を抱いて少しだけ離れさせると、エレンは顔を上げてくれた。だがすぐに顔を反らそうとするので、ハリードは自分の額を彼女にくっつけるようにして、「本当に……お前って女は」と少し呆れたような声で囁いた。そして聴こえないような小さな小さな声で(ばかだな)と囁いた。
「何よ……ハリードが、変な冗談言うから、悪いのよ……ばか……」
と、エレンも小声で途切れ途切れに囁いた。と言うよりその声を出すのがやっとだったのかもしれない。明らかに息があがり、小刻みに胸が上下して、はあ、はあと息が漏れていた。
こすれ合っていた額と額はいつしか鼻がぶつかり、あたたかな吐息が二人の間に渦巻く。あたたかいなと思うや否や、エレンはもっとそれを感じたいという気持ちがあふれ出した
少し顔を上げると、かすかにぶつかる、熱の乗った柔らかい感触に驚いた。その正体がわかると心臓が飛び出そうなのに、離れることを考えられなかった。
Last updated 2020/8/26
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